第26章 兵長ご満足プラン ※
そんなこんなで着いて早々だが、エマ達は温泉に入ることになった。
「兵長は部屋に戻ってから私が着付けるので、私服で戻ってきてくださいね。」
若草色の浴衣と深緑の茶羽織を手にしながら、 “兵長、浴衣似合いそうだな~”と楽しそうに独りごちるエマ。
わざわざ部屋に戻ってきてまた着替えるのかと少々面倒を感じたが、自分には勝手が分からないのでとりあえずエマに従おうと頷いた。
「あぁ分かった。」
「それじゃ行きましょっか!」
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二階の部屋から一階兵長降り、渡り廊下を歩く。
左右に美しく造り込まれた庭園を眺めると、この非現実的な空間がさらにエマの気分を特別なものに変えた。
しかしそれも束の間。
「おい。」
渡り廊下から別館へ繋がる扉を引き中へ入ると、何だかいやに不機嫌そうな声に呼び止められた。
振り向けば、声の通り眉間に深く皺を寄せ、すこぶる機嫌の悪そうな男と目が合う。
「な、何か…お困りでしょうか?」
射るような視線を浴びせられ高揚から一転、エマは尻込みした。
一体どうしたというのだ。
「あぁ、非常にお困りだな。」
リヴァイは眉間の皺を更に深くさせて殆ど睨みつけているようだ。
「えと…」
エマは焦りながら必死に記憶を手繰り寄せる。
どこかで彼の気に障るような言動をとってしまったのだろうか?だとしたらいつ?!
するとリヴァイはこう言い放った。
「お前と一緒に入れなくて非常にお困りだと言いたい。」
「…え?!」
思いも寄らぬ発言に、鳩が豆鉄砲を食ったような顔になるエマ。
いや…
いやいやいやいや!
「お、温泉は男女別々なんですよ…その、ご希望に添えなくてすみま」
ひぃ!めっちゃ睨まれてる!
一緒に入れないのがそんなにダメなの?!
元は兵長が勝手に勘違いしてただけじゃ…なんてとてもじゃないが恐ろしくて言えない。
「あの、これは決まりでして私ではどうにもできなくて…本当にごめんなさい!」
とりあえず少しでも彼の気を落ち着かせなければ。
エマは誠心誠意の謝罪を試みたが、そんなもので彼の憤りは収まるはすがなかった。