第26章 兵長ご満足プラン ※
戸惑う口内へ舌を素早く侵入させられてしまう。
もちろん逃げ道は塞がれてしまったから拒むことなどできない。
頬の内側から歯茎をなぞり、口蓋を味わうように動いて、最後にクチュリ…と音を立てて舌を掬い取られる。
「…はぁっ、」
「そんな顔するなよ、ただ“おかわり”が欲しかっただけだ。」
「なっ!何言ってるんですか…!」
「お前の分をもらうのは申し訳ないと思ってな。だからこれで我慢してやった。で……お前はさっきからどうしてそんなに物欲しそうな顔してやがるんだ?」
「そそそそんな顔してませんっ!」
「いいやしてる。公衆の面前だからやめろと言ったのは言ったのはお前だが、一体何を期待してやがる?なぁ、エマよ。」
人差し指で顎を持ち上げられ囁かれた。
すこぶる悪そうな顔をしたリヴァイと目が合う。
「っ!期待なんて…」
「…まぁいい。期待に応える時間はまだたっぷりあるからな。」
「~〜もう!」
大勢の人前でなんてことをしてくれたんだ、と叱りたくなったが、たぶん言ってもこの人には効かないだろうと思って抑えた。
もう、恥ずかしすぎて顔を上げられそうもない。
エマは激しい羞恥に見舞われながら手の中で溶けかけたものを急いで食べきると、リヴァイの手を引いて一目散にその場を後にした。
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「いらっしゃいませ。お待ちしておりました。」
ー夕方
立派な門構えを通り抜け入口の暖簾をくぐると、和服に身を包んだ何とも気品漂う女将が出迎えてくれた。
フロントでチェックインを済ませて鍵を受け取る。
「お荷物はお部屋までお運びしてあります。どうぞこちらへ。」
「ありがとうございます。」
先導してくれる女将の後をついて行く。
門構えから建物の外観、内観に至るまで、純和風といった趣ある造りだ。
どこからともなく漂う木の香りに心が和む。
自分の少し後ろを歩くリヴァイをチラリと振り返ると、顔は真っ直ぐ前を向きながら視線だけを動かしあちこちを見渡していた。