第26章 兵長ご満足プラン ※
結局、エマの決心を受け入れた。
正直言って、エマを自分の世界に連れ帰ってからどうするかまでは考えてない。
エマをこの世界に残したまま別れることも考えた。
だが、あいつははっきりと自分の意思を伝えてくれた。
その時気がついたんだ。
いつまで一緒に居られるかなんて分からない。
“過去の記憶を失う”という話を抜きにしても、いつまで一緒に居られるかなんてのは最初から誰にも分からない。
そもそもどこでどう生きようと、人が生きている限り、“永遠”なんてものは保障されない。
けれど人は幸せを一度手にすれば、それを“永遠”のものにしたいと色々な運命に抗い、奮闘する。
手にした幸せを守りたいと思うのは自然なことだ。
だから俺も…
俺たちの運命に抗うと決めた。
どうせ先の見えない未来だと言うなら、今ここにいるエマをできる限り抱きしめてやりたい。
どんな結果になろうと、一瞬一瞬そう思って大切に過ごしてきた時間は、決して無駄なものにはならないはずだと信じて…
「はいどうぞ!高原の牛さんから採れたミルクを使って作ってるんですって!」
満面の笑みで両手に持ったソフトクリームを一つ差し出すエマ。
やっぱり、この笑顔を失いたくないと思う。
「キャンディーみたいにぺろぺろ舐めてもいいし、大胆に頬張ってもいいです。お好きな食べ方で!」
エマから説明を受け、くるくると巻かれた白く滑らかそうなそれを、舌を伸ばしてペロ、と一口舐めてみる。
すると、瞬間的に氷でも食べたかのようなキンとした冷たさと、甘くて濃厚な味わいが口の中いっぱいに広がった。
「…悪くねぇな。」
「美味しいですか?!」
「あぁ、甘いが気にならない。不思議な食いもんだな。」
「よかった~、気に入ってもらえて。」
率直な感想を述べると、エマは花が咲いたような笑顔でペロリとクリームを舐めた。
小ぶりな舌で美味そうに何度も白い丘を舐めあげている。溶け出して下へ垂れようとするのを器用に舌で掬ってまた舐めた。
「………」
彼女はただ純粋にソフトクリームを食べているだけだ。
それなのに何故かそれがいやに淫猥な仕草に映って、俺は不覚にもムクムクと黒い欲望を湧かせ始めてしまったのだった。