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【進撃の巨人】時をかける—【リヴァイ】

第25章 神隠し




10月12日


「ほう。ここがお前が通ってる“学校”ってところか。」

「そうです」


まもなく日が傾き掛ける頃、二人の姿はエマが通う高校の前にあった。


あの日と同じ時間に、あの日と同じように学校から家に帰る道を歩いてみたら何か思い出すかもしれない。

そう思ってここへ来た。


「何か手がかりがあるといいがな。」

「そうですね…」


休日の部活動を終えた生徒達がちらちらと帰って行くのを目で追う。

学校の事は記憶にある。
自分がいた教室、先生の顔、クラスメイトの顔も浮かんだ。
あの女の子のこと以外は皆覚えていた。


「最初にお前が着ていた服を着てるやつが何人かいるが、あれが“学校”の正装なのか?」

「そうです。制服と言って、調査兵団で言う兵服のようなものです。確か兵長の世界にも確か学校ってありましたよね?」

「あるらしいが、俺は行ったことはない。」

「え?」

エマの中では学校は等しく皆が通うものだという概念があったから、少し驚いてしまった。


「教育なんてのは受けたことはねぇ。生きていくのに必要な最低限の知識は、全て一人の男から学んだ。」

「そう、だったんですか…」

「驚いたか?」

「はい…少しだけ。すみません、あまりしたくない話でしたら…」


エマはいつか聞いたハンジの言葉を思い出していた。



“リヴァイはさ、あんなだけど小さい頃からたくさん辛い経験をしてて…調査兵団に入ってすぐに唯一心を許してた友も無くしてるんだ。”



リヴァイは過去のことはあまり思い出したくないものかもしれない。

気になるが、本人にとって辛い思い出なら無理に知りたいとは思わない。

するとリヴァイはエマの問いかけには答えず、静かに語り出した。


「俺は内地の地下街で生まれた。母親に育てられたがガキのころ頃親は病死した。
1人になってドブ水やゴミ箱漁って食いつなごうとしたが、ガキにできることなんぞ限られてた。
大した知恵もなく力もなかった俺は、すぐに自分が生きているのか死んでるのかさえも分からなくなった。」


落ちていく太陽を見つめながら抑揚のない声で淡々と話す横顔を、エマは黙って見上げることしかできなくなった。


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