第25章 神隠し
「もう、余計な心配させないでよねー!でも、思ったより元気そうでよかった。もうスマホ見れないくらい酷い状態かと思ってたけど。」
「あ、うん。まだちょっとしんどいけど…ありがとう。心配かけてごめん。」
「ううん!ちゃんと生存確認ができてよかった!はいこれ!昨日と今日もらったプリント!」
「ごめんね、わざわざ渡しにきてもらっちゃって。」
「いいのいいの!とにかくこの三連休できっちり治しなよー!火曜日元気なエマに会えるの楽しみにしてるから!」
「うん、ありがとう。ちゃんと治すね。」
その後一言二言を交わし、扉は閉まった。
「誰だ?」
リビングから顔を覗かせたリヴァイが問いかけるが、エマは玄関に立ちすくんだまま動こうとしない。
「おい、どうした?」
扉の方を見つめたまま自分の声に振り向きもしないエマ。
不思議に思って歩み寄り、肩を掴んでくるりとこちらを向かせると、愕然とした顔がこちらを見た。
「エマ、一体どうした。今のは誰だ?」
「…誰……なんでしょう…」
「は?」
「誰か…分からなかった」
見開かれた瞳は小刻みに揺れたまま。
「おいおい、分からねぇってそりゃなんだ。普通に喋ってたじゃねぇか。」
おかしい。
リビングにいたリヴァイにも訪ねてきた者とエマが普通に会話してるのは聞こえていたのに、それが誰なのか分からないとは一体どういうことなのだ…
しかし次のエマの一言で、リヴァイは驚愕の表情を浮かべる事となる。
「あの子がとても親しそうに話してきたから、たぶん友達…なんじゃないかと…」
「……おい…もしかしてお前……友達かもしれない奴のことを忘れちまってるのか…?」
「わす、れて…」
不安げな瞳がゆっくりと下に泳いだ。
何かを考えているようだった。