第25章 神隠し
10月11日
元いた世界に戻ってきて一日以上が過ぎた。
今日も金曜日で本来ならば学校へ行かなければならないのだが、リヴァイといるうちは学校へ行かないことを決めた。
昨日同様学校へ休みの連絡を入れて今日も例の井戸探しをしていたのだが、やはり井戸には辿り着くことができず、焦りの気持ちをまた一段と膨らませるだけに終わっていた。
「はぁ…なんで見つからないんだろう。」
「全然違う場所…って可能性は?」
「なきにしもあらずですかね…
というかさっきから何往復してるんですか。」
「面白いほど取れるなこれは。手も汚さない、腰もかがめなくていいなんて画期的な代物じゃねぇか。どうにかして持ち帰れねぇか…」
「ハハハ、兵長のおかげで床ピッカッピカですよ…ありがとうございます。」
夕方、台所に立つエマの視線の先には、いそいそと手を動かすリヴァイの姿。
その手に何を持っているのかというと、クイッ●ルワイパーだ。
家から帰り寛いでいると、おもむろにリヴァイが廊下から持ってきたそれ。
どうやらエマの家にある掃除グッズに興味があったようで、クイッ●ルワイパーの他にも掃除機やらコロコロやら取り出してきては、一通り試していた。
「掃除機もいいが、あれはデンキがなきゃ使えんのが最大のネックだな。」
本当に自他共に認める綺麗好きであり掃除好きなんだな…
“やはりこれがいい”と言って巧みにワイパーを操っているリヴァイの姿は、普段の威厳たっぷりの兵士長とはかけ離れているように見えて、自然と微笑みを零してしまうエマなのであった。
そんな時、不意に玄関のチャイムが鳴った。
「いきなりなんの音だ。」
「誰かが家に訪ねてきたみたいです。ちょっと行ってきますね。」
エマはリヴァイへそう告げて玄関へと急いだ。
一応ドアの覗き穴からチェックする。
見えたのは自分と同じ制服を着た、女の子。
…誰だろう?
ガチャリとドアを開けると、入口に立つ彼女は少し驚いたように自分の名前を呼んだ。
「エマー!ねぇ、大丈夫?!
昨日も今日も連絡したのに返事ないから心配したんだよ?」
「あ………ごめんね、急に二日も続けて休んじゃって。」