第25章 神隠し
顎を引き寄せられて、たちまち柔らかいものが押し当たる。
サラリとした前髪が肌に当たって、キスされたんだと思考が追いつく前にぬるりと口内へ侵入した。
「ぁ……んぅ……」
リヴァイの舌は上下の歯列をなぞり、上顎の裏や舌の裏、頬の内側まで丁寧に口の中を愛撫しながら、中で転がっていた飴玉を掬い取ると、ジュルリと音を立ながら唾液と一緒に引き抜かれていった。
「んっ……っ、へいちょう?!」
「…お前の言った通り飴だな。甘かった。」
「ちょ…何言ってるんですか!ていうかこんなところでいけません!」
奪い取った飴玉を舐めながら悪い笑みを浮かべるリヴァイに、エマは心底慌てながら小声で咎めた。
平日とはいえ昼時のレストラン街、人もそこそこいる。
周囲の視線が痛くて前を向くことができず、羞恥に赤らめた顔を俯ける。
「別に見られてもいいと前から言ってるだろ。」
「へ、兵長は平気かもしれませんけど、私は顔から火が出そうなほど恥ずかしいんです!」
「通行人の一瞬の記憶なんて数日も経てば消え失せちまうんだ、そんなこといちいち気にするなよ。」
「そっ!」
“そんなこと言われても恥ずかしいものは恥ずかしいんです!”と言おうとした口をまた塞がれ、蕩けるような口づけが降り注いだ。
舌と一緒に少し小さくなった球体が押し込まれる。
「美味かった。」
「っ…もう!」
甘くて甘くて、甘い。
甘いのは砂糖のせいなのか、それとも好きな人とのキスがこんなにも甘くするのか…
霞む頭にぼんやりと問いかけながら、返ってきた球体をどうすることもできず、口の中で溶けるのをただ待っていた。