第25章 神隠し
駅周辺ににはファッションビルと百貨店がそれぞれ左右に1軒ずつ。
せっかくなら色んな服装を試してみて欲しいとも思ったが、リヴァイ自身ファッションにはあまり興味が無さそうだし、キャピキャピと愛想を振りまきながら話しかけてくる店員がいるような流行りの店もあまり好きではない気がして、結局ファッションビルの一角にあるベーシックなデザインを取り扱うお店で数着と、靴屋でスニーカーを調達した。
さっそくトイレで今しがた買った服に着替えてもらう。
黒のスキニーにグレーのパーカー、足元は白のスニーカーというスタイルで現れたリヴァイ。
裸の時は筋肉隆々として肉体美溢れる体つきが全面に押し出されるが、服を着ると華奢に見えてしまうから不思議だ。
黒のスキニーがスラリとした脚によく映えて、リヴァイのスタイルの良さを強調していた。
「兵長、すごくお似合いです!」
「まぁ動きやすいし悪くはねぇな。」
リヴァイもお気に召した様子だ。
着ていたジャージとクロックスはお店の袋にしまい込んで、並んで歩き始める。
腕時計を見ると12時半。
親の旅行中の生活費は多めに貰ってあるから、服を買ってもまだ余裕はある。
少し何か食べて、帰りに例の井戸を探しに行ってみようか…
「リヴァイ兵長、お腹空いてますか?」
「普通に食えるが…また腹ごしらえか?」
「はい、せっかく街へ出てきたので、どこかお店に入って食べるのも悪くないかなって。」
「お前がそう言うならそうしよう。どんなものが食えるのか少し興味もある。」
「良かった!じゃあそうしましょう。」
そのままエレベーターに乗り込みレストランが集まる階まで昇る。
エマがボタンを操作してエレベーターが目当ての階に止まるまで、リヴァイは始終眉根を寄せて怪訝そうな顔をしていた。
「着きましたよ。」
「おい、今…瞬間移動でもしたってのか?」
「まさか!いえいえそんな、」
どうやらたった数秒で違う階にたどり着いたことが不思議でたまらないらしい。
でも、初めて乗れば瞬間移動だと思うのも分からなくもない気がすると思い、エレベーターの仕組みを軽く説明するが、それでもリヴァイはにわかに信じ難いような顔をしていた。