第25章 神隠し
家から10分ほど歩いたところに最寄り駅がある。
そこまでの道のりは閑静な住宅街が続いているだけで特に変わり映えしない景色なのだが、隣を歩くリヴァイにとっては全てが真新しいものに見えるのだろうか、キョロキョロと目線だけを動かしていた。
途中車とすれ違った時、“あれが車です”と教えると、想像とはかなり違ったのか目を丸くしていた。
そうこうしてるうちに最寄り駅にたどり着く。
ここはこぢんまりとしていて、平日の昼間ともなれば客足はまばらだ。
エマは二人分の切符を買い、一枚をリヴァイに渡した。
「ここに切符を入れたらゲートが開くので、そしたら進んでくださいね。あ、出てきた切符を取るのも忘れずに。」
窓口の駅員の視線を感じつつ説明しながら先に通ると、リヴァイも割とスムーズに通ることができていた。
「デンシャに乗るのも結構面倒なんだな。」
「無賃で乗っちゃだめですからね、仕方ないです。」
切符と改札を交互に見ながら軽く悪態つくリヴァイの隣でクスリと笑う。
ーまもなく、1番線に電車がまいります
「あ、兵長!ちょうど来ますよ。」
リヴァイの手をとり乗り場へ向かうと、丁度右側からビュンと電車が入ってきた。
握った手がピクリと動いたので見ると、電車の風に前髪をなびかせながら、瞬きもせず過ぎゆく列車から目を逸らせないでいる。
「おいおいこんな至近距離で猛スピードで突っ込んで来やがって…あぶねぇじゃねぇか。」
速度を落として停車する列車に向かって文句を言っていた。
さっきから色々な見慣れないものに対してのリヴァイの反応が面白くて、つい頬が緩まってしまう。
「フフフ、ぶつかってはこないので大丈夫ですよ。ささ、ドア閉まっちゃう、乗りましょ。」
再びリヴァイの手を引いて電車に乗り込んだ。
入り口付近のシートに並んで腰掛け、それから電車に揺られること15分。
「電車、どうでした?」
「あの揺れはダメだな…眠っちまいそうになる。」
「えー?そこですか?」
話をしながらまた改札を通り駅を出る。
言葉の通り電車の中で眠気に襲われたせいなのだろうか、握ったリヴァイの左手はじんわりと熱を持っていた。