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【進撃の巨人】時をかける—【リヴァイ】

第25章 神隠し




「…お口に合いますか?」

「あぁ、美味い。パンも卵に浸せばここまで柔らかくなるんだな。兵団のメニューにも追加してもらいたいくらいだ。」

「よかったぁ…」

向かいに座り、素直に感想を述べて次々と頬張っていくのを見つめる。

パンとベーコンエッグなら向こうの世界でも割と馴染みがあるかと思ってのチョイスだったのだが、予想通りリヴァイの口に合ったようで安心した。それに素直に褒めてもらえたのも嬉しかった。





「それで、これからどうするつもりだ?」

「とりあえず今日は、着る物を買いに街へ出たいと思います。」


時計を見るともう10時だ。
今日は平日なので一瞬学校はどうしようかと思ったが、今は呑気に学校など行っている場合ではないだろう。

なので、先ほど学校へは体調不良で休むと連絡を入れておいた。


「ほう。ここから近いのか?」

「電車に乗って15分くらいですかね。そんなに遠くないです。」

「そうか。さっそく初日から“デンシャ”とやらに乗れるんだな。」

「兵長…覚えてたんですね!」


こっちの世界の乗り物の話は、だいぶ前に一度だけしたことがある。
あれは確か冬の夜の寒空の下、中庭のベンチに腰掛けてたわいもない話に華を咲かせていたころのことだ。


「“デンシャ”に“クルマ”、鳥みたいに空を飛ぶ“ヒコウキ”…だったか?」

「はい!飛行機はちょっと難しいですけど、車にももしかしたら乗れるかもしれませんね。」


リヴァイの頭の中では一体どんな姿形が想像されているのだろうか?

いつも通りの仏頂面からは何を思っているのかよく分からなかったが、エマはこれから行く先々でのリヴァイの反応を少し楽しみにしていたのだった。








腹ごしらえをして支度を済ませ、駅へと向かう。


ジャージ姿にクロックスという、いささかだらしのない格好で外出させてしまうのを申し訳なく思ったが、当の本人はあまり気にいていない様子だし(そもそも分かってなさそうだし)、少しの間辛抱してもらう他ないと割り切った。

それに、やはりそんな格好でも何となくお洒落に見えていたから、これはこれで良しとする。



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