第24章 異世界トリップ
格好が兵服のままだったので適当にある服に着替えて、廊下に繋がるドアを静かに開ける。
「じゃあ…ちょっと行ってくるので、くれぐれも兵長はこの部屋からは出ないでくださいね。」
「あぁ分かった。」
振り返って兵長にもう一度念を押してから部屋を出た。
とりあえずリビングに向かうため階段を降りる。
自分の家だと言うのにすごく緊張して、何故か忍び足になってしまっていた。
なにせ3ヶ月以上もあっちの世界にいたのだ…
両親は私を探し回って途方にくれてしまっているだろうか…
でもそれも、そもそも普通の時間軸で考えたらの話なのだけれど。
兵長の世界に飛んだ時に時空も超えてしまっている時点で、常識的な時間軸などもう当てにならなかった。
とにかく二人に会うのがすごく怖い…
「…………」
私は恐る恐るリビングへと繋がるドアに手をかけた。
「あらエマ、起きてたの!」
「!!お母さん…」
その瞬間、背後から声をかけてきたのは母親だった。
実に3ヶ月以上ぶりの再会だと言うのに、まったく何事もなかったように振る舞われて戸惑ってしまう。
「ちょうど良かった、今起こしに行こうと思ってたのよ、いつもより早いけど…もうお母さん達行かなきゃいけなくて。」
「へ……どこに?」
まず、聞きたいことはそんなことではないのだけれど、どこかへ行くと言われてしまえば聞き返さずにはいられない。
よく見るとよそ行きの格好をしてるし、化粧もバッチリだ。
こんな早朝にどこへ行くと言うのだろう?
「なーに寝ぼけたこと言ってるの!今日から一週間、ヨーロッパへ旅行に行くって前々から話してあったでしょ?お父さんと!」
え………?
「……そ、そうだったね!うんうん確かに今日からだった!ごめん、寝ぼけてぼうっとしてたよ。」
そんなこと、いつ話してたっけ…?
「もう…そんなんで一週間大丈夫?!お母さん達がいなくても。」
「大丈夫大丈夫!一週間ぐらいヘーキ!だから夫婦水入らずの旅行、楽しんでおいでよ。」
今日から両親は、一週間のヨーロッパ旅行……