第24章 異世界トリップ
「ど、どうしましょうこれから?!」
再びパニックになりかけて兵長に縋るように問いかける。
「落ち着け…ここはお前がいた場所なんだろ?だったら頼れるのはお前しかいない。俺も訳が分からねぇままだが…俺のいた場所に繋がる古井戸の場所は覚えてねぇのか?」
「あ……」
そうか、井戸だ!
必死にあの日の記憶を思い出す。
確か…狭い道をいくつも通り過ぎた先に忽然と現れたんだ。
だけど肝心の道順が…
「猫…」
「は?」
「すみません…猫を追ってたんです。そしたらいつの間にか井戸のある場所に着いていて…だからその…道は覚えていないんです!すみません…」
言いながらどんどん焦ってしまった。
どんな井戸だったかは覚えているのに、肝心の道のりが分からないんじゃ意味がない…
兵長の顔をおそるおそる見た。
視線の先にあったのは、苦笑する顔。
「おい、エマよ。これからお前の特技は“方向音痴か迷子になること”にしたほうがいいと思うぞ。」
「ほ、本当に…。呆れてますよね…」
冗談めかすように言ってくれはしたけれど、受けとる側はその冗談に乗っかる余裕はない。
「本当にすみません…でも!確か通学途中の道を逸れていったところだったので、探せば見つかると思います!」
「ほう…ならそれほど問題なさそうだな。」
必死になって説明を加えたら頷いてくれた。
どうやらギリギリのところで失望されずに済んだみたいだ…
で。
「ところでいくつか気になることがあるんですけど…」
如何せんまだ、ここは私の部屋だということしか分かっていない。
「様子を見に行くのか?」
いつの間にかまた窓から外を眺めている兵長が振り向いた。
「あ、はい。まずはこの家が本当に私の家なのか、ちゃんと戻ってこれてるのか。それと、今ここは何月何日なのか…」
窓から差す光の感じだと、恐らく時間は朝の早い時間か…
「俺も行く。何かあったら」
「あ!すみません、兵長はここで待っていてもらえませんか?もし親がいたらまずいことになりそうなので…」
兵長の申し出は心強かったが、まだ不確定要素が多すぎる中ふらふらと外を歩かせるわけには行かなかった。
本当、親に見られでもしてしまったら一体どう説明したらいいのやら…だ。