第24章 異世界トリップ
「…詰まるところ俺も、時空を超えた旅行ができたってことか?」
「え…?」
目の前の兵長は慌てる訳でもなく、嘆く訳でもなく冷静だ。
「お前は元の世界に戻れて、俺はお前の世界にトリップしちまった、そういうことだろ?
分かってることはそれと…あとは落ちた。」
「落ちた…?」
言葉の意味が分からず聞き返すと、兵長は私の体を解放して立ち上がり、部屋の中を歩き回りだした。
「お前が足を滑らせた時、普通ならその場に転ぶだろ?だがお前は見えなくなった、足の先から頭のてっぺんまですっぽりと枯れ葉の下に吸い込まれてったんだよ、俺の見た限りじゃ。」
「え…そんな……じゃあ兵長は…」
「すぐ引っ張り上げようとしたが逆にお前に引っ張られて、落ちた。アレは普通に重力が働いただけとは考えにくい。俺の腕力を持ってしてもまったく歯が立たず終いだったからな。」
眩しそうに目を細めながら窓の外を眺めていた顔を私に向ける。
兵長はあくまで冷静なままだ。
「そういうことだったのですか…でも、なんで枯れ葉の下に…」
だって、古井戸ならウォール・シーナにあったじゃないか。
「その枯れ葉の下に、井戸が埋もれてたりしてな。」
「まさか!!」
「当てずっぽうを言っただけだ。けどあの枯葉の量じゃ下は見えなかったからな、それもゼロじゃないだろ。」
「もし…仮にそうだったとしたら、シーナの古井戸じゃなくて兵舎の中に繋がる場所があったってこと…」
そんな近くに……
「それと、今回もどうやらこんなところから出てきたらしいな。」
背後でした声に振り返ると、大きく扉の空いたクローゼットに手をかけて中の様子を伺う兵長がいる。
かかっていた洋服が所々落ちて、床に転がっていた。
「そうみたいですね…」
暗闇の中で体に触れていた柔らかいものの正体は、洋服だったのか…
じゃなくて!