第23章 予想外の出来事
エマが全然足りてない。
あっちの方ももう一週間以上ご無沙汰だ。
もっと触れ合いたい、肌を重ねて体温を感じたい…
壁外調査に向けての準備は言うまでもなく最優先だが、心の奥では悶々とそんな思いを募らせてばかりだ。
なのに当の本人は今何をしているのかと言うと、ミケと楽しそうにおしゃべり。
なんて呑気な奴なんだ…
ミケがエマに手を出すような奴じゃないのは分かっているが、とにかく今は自分以外の男がエマのそばにいるだけで黒々とした嫉妬心が湧き上がってしまう。
自分はなんて子供じみてるんだと思った。
エマのことになると本当に自制がきかなくなってしまう。
花壇にしゃがみ込む2人を凝視しながらそんなことを考えていると、ミケの手がエマの頭を撫でたのが見えた。
また大きな舌打ちが廊下に響いた。
「朝っぱらから穏やかじゃないね〜。」
「チッ…なんだメガネか。」
「ちょっ、そんなにがっかりしなくてもいいじゃなぁい!」
「うるせぇな…」
急に背後から現れたハンジの無駄にデカい声に顔をしかめる。
面倒な奴に見つかってしまった。
「ごめんね~?エマじゃなくて。外なんか眺めて珍しいじゃん、何か見えるの?…あ!」
ハンジは無遠慮にリヴァイの横に並んで窓から外を見渡すと、例の光景が目に入ったようで声を上げた。
「へぇ~珍しい組み合わせだね。何話してるんだろ?」
「俺に聞くな。」
「…ははーん。さてはリヴァイの機嫌を損ねてる原因って、アレ?なーんか良い雰囲気だもんね、2人。」
図星だよね?というように自信ありなげ顔でこちらを見てくるハンジがめちゃくちゃに鬱陶しい。
「知ったこっちゃねぇ。」
「またまたぁ!本当は気になって仕方が無いんだろ?」
「二度とその口でしゃべれねぇように顎外すぞ。」
何でも無いフリをして適当にやり過ごそうとするが、こいつは一切空気を読まずに思ったことそのまま投げてくるから面倒くさくてたまらない。
現にいくら殺気を込めた視線を突き刺して言ったって、へらへら平謝りするだけで反省の色など微塵も感じることはできない。