第23章 予想外の出来事
「チッ…」
朝日が差し込む廊下に盛大な舌打ちが響いた。
胸中まったく穏やかでない…
爽やかな朝に全く似つかわしくない不機嫌そうな表情で佇むのはリヴァイだ。
廊下の窓から見下ろすそこには、やたらと図体のでかい男と何やら談笑するエマの姿。
壁外調査まで残り一週間を切り、日中の訓練がますます忙しくなり書類仕事をする時間がとれないので、最近は朝食前にも仕事をしていた。
それで先ほど、仕事の途中で用を足して執務室へ戻ろうとしたところで、花壇の前にしゃがむエマとミケが見えてしまったというわけだ。
珍しい人物と一緒にいるので思わず目が離せなくなってしまった。
仲睦まじそうに並んで座りやがって…一体何の話をしてやがるんだ。
というかもう少し離れろ。
射るような視線が窓越しに降り注いでいることなどつゆ知らず、楽しそうにしている2人。
別に自分以外の男と話すことくらいあるだろうに、どうやら今のリヴァイにはそれを許す寛大な心は生憎持ち合わせてはいないようだ。
あの夜会の日からリヴァイはエマに対しての独占欲がより一層強くなってしまったようで、例え兵団内の顔見知りでもエマに近づく異性にはかなり敏感になっていた。
それに加えて今回の壁外調査。
4月も半ばを過ぎると新兵が入ってくる。
その前にどうしてもやりたかったというエルヴィンの希望で今回の調査が決まったのだが、決まった時点であと二週間しか猶予がなく兵団内はかなり慌ただしい。
確かに新兵が入ってこればしばらくはその指導やら全体訓練を重ねてからじゃないと壁外には出られないため、決断したエルヴィンの気持ちは分かる。
だが、やはり二週間しか猶予がないというのは正直きつい。
昼間はほぼ会議か実践演習に当てられ、たまった書類もエマが引き受けられるものは任せておけるが、当然自分でなければダメなものもある。
そういった執務は休日はもちろん、今朝のように早朝か夜にこなさなければならない日々だったのだ。
そんな中でエマとゆっくり過ごす時間などほぼなく、この一週間はせいぜい業務連絡か、日の出ているうちに執務室に寄れた時に少し話すだけ。