第23章 予想外の出来事
「まぁだが、躊躇う気持ちはよく分かる。アイツの事を好きになった以上、離れるのが辛いと思うのは当たり前だしな。」
「…はい」
「気が済むまでここにいても良いんじゃないのか?期限付きの滞在ってわけでもないんだろう?」
「そう…ですね。」
何だか歯切れの悪い返事に顔を覗き込むと、考え込むような顔になっているエマ。
リヴァイと恋仲になってこちらとしては祝福してやりたい気持ちだが、やはり本人としては頭のどこかに不安があるのだろうか。
いや…不安に思ってしまうのも無理もないかもしれない。
いつかは決断しなければならないだろう…
その時エマはどんな判断をするのだろうか。リヴァイは…?
ただでさえ調査兵が恋愛や結婚をするのは難しい。
普通の人の何倍もの“死”のリスクを抱えた上で、永遠の幸せを手にすることができる人なんてほぼいないと言っても良い。
リヴァイに関してはすぐ死ぬような奴じゃないと思うが、それでも壁外に出る度に“死”はずっと身近について回る。
それに加えて、エマ自身だって、いつまでここに居られるか分からない…
ぐらぐらと揺れる不安定な床の上で手を握り合う2人。
難しい恋愛だと思った。
それでも、2人はきっと今幸せなんだろう。
その幸せを素直に応援してやりたい。
どんな結末になるか分からないが、一日でも長く2人が一緒にいられるといいと思った。
ポン―
「ミケさん…?」
いつの間にか訪れた沈黙の中、下を向いて黙々と種を植え続けていたエマの頭に、大きな手が乗っかった。
「…暗い顔してる暇があったら、少しでもアイツの、リヴァイのそばで笑って過ごせ。」
目を丸くして見上げるエマとは視線が合わない。
薄黄色の瞳は、いつの間にか山から完全に顔を出した太陽に眩しそうに目を細めていた。
「そうですね…ありがとうございます。」
ミケの優しさが心に染み渡った。
ミケに倣って目を細めるエマ。
今日は穏やかな一日になりそうだ。