第23章 予想外の出来事
「違うのか?」
「あぁ…えと、これは野菜じゃなくてカスミソウの種です。」
「…なんだ草か。」
「プッ…ハハハハッ!」
失礼だと思いつつも、二度も真剣に間違えてしまうミケが面白くてつい盛大に吹き出してしまった。
突然笑い出すエマに驚くミケ。
「…すみません、これは“カスミソウ”っていう名前の花の種なんです。紛らわしいですよね、フフフ。」
「花…だったのか。」
つぶらな瞳が丸く見開いてまた驚いている。
普段接点もあまりないし、貫禄のある見た目のミケに話しかけられて若干緊張してしまっていたが、こんなに可愛らしい勘違いもするのかと思って少し親近感が沸いた。
「給仕の方にここの手入れをし始めたって話していたら、余ってる種を分けてもらって。今植えれば、7月ごろには白くて小さい花が咲くはずです。」
「結構かかるんだな。」
「種からだとこんなものですかね。今から楽しみです。」
エマはミケに微笑むとくるりと花壇を向いてしゃがんで、種蒔きの続きをし始めた。
すると大きな体も隣にしゃがむ。
「俺にも少しやらせてくれ。」
「えっ、そんな、大丈夫ですよ?ミケさん忙しいでしょうし…」
「朝の少しくらい、いい。たまにはこうして立ち止まることも重要だ。」
「そうですか…?じゃあ、お言葉に甘えて…」
「あぁ。」
朝日に染まる遠くの山を見つめながらボソリと呟くミケの大きな手のひらに、黒くて小さいツブツブを乗せた。
「ここにくぼみを作ったので、5粒ずつぐらい蒔いていってくれますか?」
「わかった。」
「お願いします。」
エマの言う通りに、手のひらから小さな種を摘まんで土に蒔いていく。
エマも同じように隣で蒔いていると、1、2、3…と小声で数を数える声が聞こえてくるので、数え終わったタイミングで声をかけた。
「ミケさん。」
「なんだ?」
「5粒っていうのは大体なので、ひとつまみとかでいいですよ。」
健気に数えているミケをまた可愛いと思ってしまいながらもアドバイスすると、一瞬こちらを見た後今度は数を数えずに摘まんだ。