第23章 予想外の出来事
「これからしばらくはまた忙しくなる。お前もせっかく落ち着いてたところでまた負担をかけることになっちまうな…」
「いえ…当たり前のことですから!私にも頑張らせてください!」
エマはモヤモヤしかけた気持ちを振り切るように明るく応えると、リヴァイは短く礼を言って机上に目線を戻した。
そう。リヴァイと一緒にいるということは、そういうことだ。
彼は1人の人間であると同時に調査兵団の兵士。
そして兵団の中で一番の実力者である兵士長だ。
兵士長として多くの仕事をこなしながら、他の兵士と同じように訓練に励まなければならないし、この間の夜会のように兵団の外での任務だってある。
そして壁外調査が行われれば、あのおぞましい巨人相手に剣を振るい、人類の矛となるのだ。
この世界から巨人を殲滅するまで、ずっと。
それが何年先のことなのかも分からないし、そもそも巨人をこの世界から駆逐できる確証があるわけでもない。
だが、それでも彼らは僅かな希望を信じて立ち向かい続けなければいけないのだ。
そうしなければ、ウォール・マリアの壁が破られた今、壁の中の人々の安寧を守ることさえ危ぶまれる。
そんな重たいものを背負って戦い続けるリヴァイに、自分もついて行かなくてはならない。
もちろんそんなリヴァイを尊敬しているし、そういうリヴァイだからこそ惚れた部分もある。
だから必死について行かなくてはいけないのだ。
分かっている。
分かっているのだけれど…
「…………」
ペンを持つ手が止まる。
エマは実験施設で見た巨人を思い出していた。
壁外調査を行う度、あの恐ろしくおぞましい巨人に、何人、時には何十人という兵士が犠牲になっていく。
勇み立って壁の門をくぐっていった人間が、変わり果てた姿で戻ってくる、もしくはその存在すら無かったことのように跡形もなく消えてしまう…
前回は皆が口を揃えて言っていた。
“運が良かった”と。
という事は、前回のような被害の少なさはとても珍しいことで、今回もそんなケースが当てはまるということは確率的に言って高くないだろう…