第23章 予想外の出来事
「からかってなんかねぇよ、本心を言ったまでだ。」
「…っ、兵長はなんで平気でこんなことできるんですかぁ…」
「平気か…本当にそう思ったのか?」
「だって、涼しい顔して普通のトーンでさらっと恥ずかしいことだって言えるじゃないですか…私も少しは兵長みたいになりたいです。」
「それはどうだかな。」
リヴァイは少し首をかしげてそう言うと、おもむろにエマの手をとって自分の胸に当てた。
「えっ…」
「聞こえるか?」
手のひらに伝わってくる鼓動。
エマは驚いてリヴァイの顔を見た。
「俺だって普通にこうなったりする。分かりずらいだけだ。」
「兵長…」
トクントクンと少し速いテンポで鼓動を打つ心臓。
いつもクールなリヴァイでも、ちゃんと自分にドキドキしてくれているのかと分かるとエマは嬉しくなった。
「それに、お前は俺みたいにはなるなよ?」
「どうしてですか?」
「そのままのお前が好きだからに決まってるだろうが。」
手のひらに伝わる鼓動が少しだけまた早くなった気がした。
エマはまた顔を赤らめながら“はい”と頷いた。
あの夜会から二週間近くが経ち、相変わらず忙しなく過ぎる毎日だが、束の間のリヴァイとのこういう時間が大好きだ。
そんな毎日が繰り返されると人の心は全くもって単純で、こんな日がいつまでも続いていくように思えてくる。
「エマ。」
会議資料を見返しながら、リヴァイが呼んだ。
隣でペンを走らせていたエマが顔を上げる。
「また、壁外調査が決まった。」
ドクンと自分の心臓が鳴ったのが分かった。
「…いつですか?」
「二週間後だ。」
リヴァイの表情は落ち着いていて、さっきまでとあまり変わらない気がした。
「結構、すぐなんですね…」
「前回の実績がよかったからな。今回は上の許可が割とすぐにおりたらしい。」
「そうですか…」
穏やかな日々がずっと続くというのは、簡単そうで実はすごく難しいこと。
この世界だから特別にじゃなくて、長い短いはあれど生きている限りどこにいても同じようなもの。
それくらい分かっていると思っていたのに、エマはリヴァイの口から聞いた事実に酷く動揺してしまった。