第23章 予想外の出来事
三月も下旬になると、この世界も昼間は暖かな日が増えていく。
暖かな木漏れ日が差し込む廊下を、コツコツとブーツを鳴らして目指した先はもうずいぶんと行き慣れた場所。
ガチャ―
「あ、兵長お疲れ様です。会議終わったんですね。」
「あぁ。それよりどこから持ってきたんだ、それは。」
リヴァイの執務室に現れたエマの手には、小さめのガラス瓶に入った数本の白い花。
「へへ、花壇の手入れをしているときに咲いてるのを見つけたんです。お部屋の中も少しは春らしくなるかなと思って。」
無邪気な笑顔を見せながら、窓辺にコトリと置く。
持っていた会議の資料を机に置くと、リヴァイもエマの隣に並んだ。
「なんていう花なんだ?」
「ノースポール。どちらかというと寒い時期を好んで咲く花なんですけど、見た目はとっても春らしい花だなって思いません?」
リヴァイは言われたままにその花を眺めた。
中心は黄色でその周りに白い花びらを付けている可愛らしい花。
春の日差しを受けて柔らかな色を放つその花は、会議を終え疲れたリヴァイの心をそっとほぐしていくようだった。
「春らしい花…かどうかはよく分からねぇが、花を飾っておくのも悪くねぇな。」
「フフ、ですよね!癒やされます。」
「そうだな…」
嬉しそうに笑うエマは窓辺に咲くノースポールによく似てとても可憐で、リヴァイはおもむろに花瓶から一輪抜くと、エマの耳の上に添えた。
「えっ?」
ぽかんとしているエマに顔を寄せ、少し傾けてキスをする。
「へ、兵長!いきなりどうしたんですか!」
たった2、3秒の口づけの間に頬を真っ赤にして慌てるエマが可愛くて、リヴァイはその頭をワシャワシャと撫でた。
「お前に似合いそうだと思って髪に付けてみたら想像以上だったから、つい、な。」
「も、もう!からかわないでくださいよ…」
口角を上げるリヴァイの目の前で、恥ずかしそうに髪に添えられたノースポールに触れるエマ。
確かにエマの言う通り、部屋に花があると癒されると思ったが、それ以上にやはりエマがそばにいることが自分にとっては一番の癒しだ。