第22章 制御不能 ※
強い力で握られた手が僅かにだが震えている。
自分を見つめる三白眼にいつもの鋭さはなく揺れていて、自責の念に駆られるリヴァイの気持ちが痛いほどに伝わってきた。
微かに震える白い手に、エマはもう片方の手をそっと重ねた。
「兵長…」
柔らかな視線を向け、静かに首を振る。
「今回のこと、怖くなかったと言えば嘘になりますけど……心のどこかで信じてたんです。絶対に兵長が助けに来てくれるって。」
「…………」
「だから兵長、どうか自分を責めたりしないでください。
夜会に行くと決めたのは私自身ですし、今こうして兵長のそばにいられるだけでもう充分なんです。」
エマはそう語りかけると、優しく微笑んでリヴァイの肩をふわりと包み込んだ。
確かに怖かった。だけどもう泣かない。
兵長がこうして隣にいてくれるのだから…
「へへへ…私、この世界に来てからメンタル強くなったのかもしれません。」
愛しい人を抱き寄せながら、少しおどけて言ってみせる。
「エマ…」
リヴァイの表情は見えないが、名前を呼ぶ声が少し戸惑いの色を含んでいるような気がした。
いつも抱きしめられるばかりで、エマの方から抱きしめることなどほとんどなかったし、驚いているのかもしれない。
確かに普段なら恥ずかしくて自分から抱きしめるなど到底出来ないが、今はどうにかしてリヴァイのせいではないと伝えたかったのだ。
「…ハッ、まさかお前に慰められる日が来るなんてな。」
リヴァイは包み込まれたまま、ゆっくりとエマの背中に腕を回した。
心地良い体温がじんわりと伝わってくる。
「たまには私にも兵長のこと助けさせてください……あ…でも元々兵長に助けられたのは私のほうだから、私がそんなこと言うのは変なのかな……あれ?なんかよく分かんなくなってきました…」
「そんな細かいことはどうだっていいだろ。それよりエマ…」
「はい?」
「本当に我慢してないか?あんまり思い出させたくもないが…憲兵に襲われた時のこともあるだろ…」