第3章 いきなりピンチ
「…怒ってるのかな。」
エマは小さくなっていくリヴァイの背中を見つめながら呟いた。
「いいや。あんな態度だが、あいつは嬉しく思っているはずだよ、君が無事戻ってきて。」
不安そうなエマを覗き込んでエルヴィンが微笑む。
「そう、ですか…本当に今回のことは反省します。」
「そんなに落ち込まないでーエマ!こうして無事だったんだから!ね?エルヴィン?」
「あぁ。何はともあれ我々の元へ戻ってきてくれたんだ、それで十分だよ。」
3人の優しさに、エマは感謝の言葉を述べながらも自分の行いを深く反省するのだった。
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医師の診断は、軽度の低体温症だった。
ハンジが持ってきてくれた暖かいスープを飲み風呂にもゆっくり浸かると、青白く氷のように冷たかった手足にもだいぶ血の気が戻ってきた。
その後ハンジは気を利かせて、倉庫から1枚余分に毛布を持ってきてくれた。本当に何から何まで頭が上がらなかった。
エマは与えられた自室のベッドに横になり、毛布にくるまった。
長い一日だったな。
ここへ来てからまだ3日、彼らからしたらまだまだ得体の知れない人間なのに、とても優しくしてくれる3人。
エマはそんな優しさを心から有難く思うと同時に、気持ちだけが焦っていた。
ここへ来てからお世話になりっぱなしだ。
彼らの力になりたいという漠然とした思いはあるが、実際自分が何をしたらいいのか分からなくなっていた。
彼らみたいに直接巨人を討伐して貢献することも出来なければ、叡智を絞ることも難しい。
何せまだ分からないことが多すぎる。
このまま中途半端な立場でここに居続けるのは良くないのかもしれない。
「やっぱり、早く帰る方法を探した方が…」
エマは天井に向かってポツリと呟くと、ゆっくり瞼を閉じた。