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【進撃の巨人】時をかける—【リヴァイ】

第21章 初体験




「えと、それは……」

なんと返せばいいのか悩むエマを見据える、硝子玉のような瞳。


「エマのことはずっと大事にする。だから僕のところへ来てほしい。」

「…お言葉嬉しいです。だけどその…直ぐには…」


エマはできるだけ穏便に収めようと慎重に言葉を選ぶが、切なげに自分を見つめていた顔は下を向いてしまった。


まずい、このまま気を悪くさせてしまうだろうか…
でも、ここで話を合わせてしまえば後々話がややこしくなるかもしれない。

ここはやはり、どうにか上手いことその気がないことを伝える方がいいだろう。


そう判断し意を決したのだが、その時伯爵の口からポツリと出た言葉にエマは固まってしまった。



「…あの兵士長、そんなにいい?」


「えっ…」


エマの瞳が大きく揺れる。



「リヴァイ兵士長だよ。君、すごく熱心に仕えてるみたいだもんね。」

「そ、それは秘書として果たすべき義務ですから…」

「そう…」


顔を上げないまま、声のトーンが低くなった。
さっきまでの朗らかなオーラはどこかへ消えてしまっている。


「ならさ、そんな義務今すぐ放棄しちゃいなよ。どうせ大した見返りもなく扱き使われてるんだろ?あの兵士長常に人殺しそうな目してるし怖いよ。
あんな人の元で働かされるくらいなら僕のところに一」



ガタッ!



「兵長はそんな人じゃありません!」



その瞬間、勢いよく立ち上がり、声を張った。



兵長は……そんな人じゃない。

優しくて情に厚くて、とても暖かい人だ。

よく知りもしないでそんなこと言わないでほしい。


いくら相手が貴族のお偉い様でも、兵長のことをそんな風に言われるのは耐えられない。


握った拳を小さく震わせ、きょとんとする伯爵を見下ろした。


しかしそ次の瞬間一



ドサッ!



「……っ?!」



突然、脚の力がするりと抜けて、エマは膝から崩れ落ちるように床に倒れ込んでしまった。


あ…れ……


起き上がろうと腕に力を入れてみても思うようにいかず、冷たい床が身体に張り付く。



「なに……これ………」


うつ伏せに倒れたままなんとか首だけ持ち上げたが、目に映った予想もしない光景に、エマは背筋を凍りつかせた。



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