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【進撃の巨人】時をかける—【リヴァイ】

第21章 初体験




思いもよらぬタイミングでリヴァイと目が合って動きが止まってしまったエマ。

リヴァイの表情からは何を考えているのかよく分からなかったが、こちらの動揺ははっきり伝わってしまったような気がする。



「エマ?どうかした?」


不意に声がして見上げれば、心配そうな顔をした伯爵が見下ろしている。


まずい。今はこの人に意識を集中させなければ。



「いえ、なんでもありませんよ!」

エマは素早く笑顔を取り繕うと、自ら伯爵の手を取って歩きだそうとした。

その時もう一度リヴァイの方を見ると、こちらはもう見ておらず、ちょうど近寄ってきた一人の女性に話しかけられていた。


あれ?あの人はどこかで……


煌びやかなドレスに身を包み、いかにも上流階級の人というような雰囲気を醸し出すその女性を、エマはどこかで見覚えがあったような気がした。




………そうだ思い出した!
あの人、前にシーナのお店の前で!


あれは2月の予算審議会の後、リヴァイとシーナの町のお店に立ち寄った時現れた女性だ。


はにかんだ笑みを見せながらリヴァイに何か耳打ちする女性。
そしておもむろにリヴァイの手を取り広間の外へと出ていってしまった。



その時、エマの胸がざわりと音を立てた。



あの人は…一体兵長の……



そこまで考えたら、なぜだか分からないけど胸のあたりが苦しくなった。

モヤモヤザワザワと言いようのない不快感が心を支配して、酷く落ち着かない。



「……大丈夫?」

「あっ、すみません!ちょっと目が回っちゃって、へへ」


しまった。伯爵の手を握ったまま、また固まってしまっていた。


エマはダメだダメだと胸の中のモヤモヤを何とか追いやり、ニコッと笑って伯爵の手を引いた。


「ぼうっとしててごめんなさい。戻りましょう。」

「おっと、いきなり積極的だね。何も無いならいいんだけどさ…」

伯爵は嬉しそうに笑った。


が、その直後、笑顔を消し鋭い目つきでリヴァイが出ていった扉を見つめていたのは、背を向けて手を引っ張るエマには見えていなかったのだった。



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