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【進撃の巨人】時をかける—【リヴァイ】

第21章 初体験




談笑を続けていると、会場にヴァイオリンの音が響き出す。


貴族の夜会と言えばダンスだ。

エマもそういう話は何となく頭の片隅に知識としてあったのだが、実際に見るのは初めてである。


音楽が鳴り出すと参加者は男女で組になりそれぞれに踊り出す。

中世ヨーロッパの貴族文化のような煌びやかな光景に、エマの目は輝いた。


その時、急に手を引かれてその勢いのまま立ち上がらされる。

視線の先には柔らかな笑みを浮かべ、エマの手を引くグラーフ伯爵の姿が。


「エマ、僕達も行こう!」

「え?私ダンスなんて踊ったことないですよ?!」


まさか自分が踊ることになるとは1ミリも予想してなくて、引かれた手につい力が入ってしまうが、伯爵の力も負けていない。


無理!あんなに優雅に踊れっこないよ!


何とかならないかと顔で訴えてみるも乗り気になった伯爵はお構い無しにグイグイ進んで、エマはとうとう手を引かれるがまま輪の中へと連れ込まれてしまったのだった。



ちょうど曲の切れ目になってエマの前に跪く伯爵。


「お姫様、僕と一曲お供して頂けますか?」

「は、…はいっ…」


差し伸べられた手を取り、ドレスの裾をちょんとつまんで見様見真似でお辞儀してみる。

するとグラーフ伯爵の手が腰に周り、ついにダンスが始まってしまった。


「大丈夫。僕が上手くリードするから、身を任せて?」

「あ、はいっ!」


ダンスの経験なんてもちろんある訳がないエマたが、伯爵の見事なエスコートのおかげでなんとかついて行くことが出来ていた。

しかし当の本人は伯爵のステップに合わせるだけで必死だ。

ゆったりとした曲なのに意外と忙しく足を動かさなくてはならず、クルクル回りながら踊り続けることも想像以上に目が回った。


そうこうしているうちに曲が終わり、エマはやっとの思いで解放される。



上がった息を落ち着かせながらおもむろに顔を上げると、視線の先の人物とばっちり目が合ってしまった。


リヴァイだ。

伯爵とのダンスを見られていたのかとエマは動揺してしまった。


こうした場でのダンスなど特に深い意味はないのだが、それでもリヴァイに見られてしまうのは気まずいと思ってしまった。


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