第3章 いきなりピンチ
…………
ええっと、これは…
「どういう状況なのでしょうか…?」
「今から兵舎に帰るところだが?」
「いやそれは分かってるんですけど、」
なななんで、お姫様抱っこされてるの?!
帰るぞと言われたと思ったら突然抱きかかえられて、この状況でどう平常心を保てというのか。
てっきり普通に歩いて帰るとばかり考えてたんだけど…
というかなんでさらっとこんなことできるんだ。
「あの、ちゃんと歩けますから!降ろしてください!」
「ダメだ。この寒さと空腹でだいぶ体力が奪われてる。弱ってる奴に無理させる訳にはいかねぇだろ。」
「いやでも!」
「でも、じゃねぇ。黙って俺に従え。」
「っ、はい…」
確かに手足が動きにくくはなっているが歩けない訳ではないから、さすがにここまでしてもらうのは気が引けた。
というかお姫様抱っこなんて恥ずかしすぎる。
しかしリヴァイの有無を言わさぬ物言いに、エマは反論を諦めるしかなかった。
「じゃあ行くぞ。振り落とされねぇようにしっかりしがみついてろ。」
「?!え、あ、はい!ってぎゃああああ!!!」
注意事項の意味がよく分からないと思いながらも返事をした瞬間、
エマの身体はかかえられたまま一瞬で地面から離れた。
「なっ何これ何これなにこれーっ?!」
「ピーピーわめくな。死にたくなけりゃ必死こいて俺に掴まってろ。」
リヴァイはエマを抱いたまま、森の中を飛んだ。
2つのアンカーを木々に指し、ガスを吹かして飛び回る。
物凄いスピードと浮遊感だ。
風を切るとはこういうことか。
恥ずかしさでさっきから熱を持ちっぱなしの頬に冷たい風が当たってとても気持ちがいい。
目に映る景色が形を留める前にどんどん流れていく。
エマはリヴァイの首に必死にしがみつきながら、鳥にでもなったような不思議な感覚に興奮を覚えていた。
すごい!すごい!私、空を飛んでる!
エマは大きな瞳をキラキラとさせながら、兵舎までの間、味わったことのない不思議な感覚に魅了されていた。