第3章 いきなりピンチ
俯く頭をポンポンと撫でてやると、また“すみません”と謝っている。
「分かったからもう謝るな。」
そう言うとエマはリヴァイを見上げて、涙の跡がついた顔でぎこちなく笑った。
「私…このままここで一生を終えるのかと思ってしまいました。」
「馬鹿言え、元の世界に帰るんだろ?こんなところで死んでる場合か。」
「そ、そうですよね。でも、兵長が助けてくれなかったらと思うと…」
「お前は助かったんだからもういいだろ。それに俺もお前を見つけた身として、無事に帰すまで死なすせる訳にはいかねぇよ。」
まっすぐに見つめられそんな台詞を言われれば、エマの心臓は小さく跳ねてしまう。
「…ありがとうございます。リヴァイ兵長って本当に優しい方なんですね。」
「血も涙もないような人間に見えていたか?」
「いやいやそんなことは!でも、最初のイメージとは随分違います。あっもちろんいい意味で!」
「そうか。」
短く答えたリヴァイは僅かに微笑んでいた。
その表情を見てエマも安心してふっと小さく息を吐いた。
が、その時。
「ひゃぁっ!!!」
「今度はなんだ…」
「あっあのあのあの、すみません!!」
平常心を取り戻したエマは、ここでやっと、リヴァイの腕の中に収まっていることに気がつき叫び声を上げたのだ。
エマは慌てて腕からすり抜けると勢いよく謝った。
「…お前から飛び込んできたんだろ。」
リヴァイは呆れたように言う。
「えええ!!そんなこと私がいつ?!」
「俺が駆けつけてすぐにだ。」
エマは黙って思い出す。
………
………
あぁ!
私ったらなんて大胆なことを!!
自分のした行動とはいえ冷静に思い返すと、恥ずかしさで顔から火が出そうになって頬を両手で覆う。
あの時は気が動転していただけ、それだけのこと…
なんだけど……
はぁー恥ずかしい!!
「それだけの元気があればもう大丈夫だろ。そろそろ行くぞ。」
「あっは、はいっ!」
慌てるエマを後目にリヴァイは立ち上がり、服に着いた土埃を払った。
自分がこれだけ取り乱していても、顔色ひとつ変えず冷静な彼を見て、余計に恥ずかしくなるエマであった。