第21章 初体験
「その気になったか?」
「ッ!兵長がこんなことするからですよ…」
「お前がいちいち俺を欲情させるようなことを言うからだ。」
密着した腰の辺りに明らかに硬いものが当たっている。
それがリヴァイの熱源だとすぐに分かるとエマは益々顔を赤らめ俯いた。
「続きは夜会が終わってからだな。」
「はっ!はい…」
怪しげな笑みを浮かべるリヴァイに精一杯の返事をすれば、両手でふわりと頬を包まれ、薄桃色の紅を引いた唇にリヴァイの唇が優しく押し当たる。
そっと触れるだけのキスのあと瞼を開けると、急に真剣な眼差しを向けるリヴァイが目に映った。
「…俺は伯爵を信用したわけじゃない。できるだけ気にかけるつもりだが、片時も目を離さずにいれる訳でもねぇ。お前ももし危険を感じたら俺かエルヴィンに即助けを求めろ。」
「わ、わかりました…!」
「なにもねぇのが一番だがな。
……そろそろ出発の時間だ、いくぞ。」
いまいちリヴァイの言う“危険”の意味がよく分からないままだったが、そう話す彼の真剣な雰囲気から、夜会には何か影が潜んでいるかもしれないというのは十分伝わった。
エマは背筋をしゃんと伸ばして気合いを入れ直すと、リヴァイと共に執務室を後にした。
一一一
兵舎を出て数時間馬車に揺られ、エルヴィン、リヴァイ
そしてエマの3人は王都中心部にある大きな屋敷にたどり着いていた。
「わぁ……素敵な屋敷!すごい!」
目の前に現れたいかにも“貴族の屋敷”というような建物に、エマは早くも心踊らせていた。
「君の世界にはこんな建造物はなさそうだな。」
「はい…こういうのは本でしか見たことがなくて…」
「そうか。なら中を見たらもっと気分が上がるかもしれないぞ。」
エルヴィンの言葉を聞いてさらにワクワクしてしまう。
「今日はお前もだいぶ機嫌が良さそうじゃねぇか、エルヴィン。」
「そうだな。華々しく着飾ったエマを見られると思うと自然と気分も高揚するよ。早くコートの下が見たいものだ。」
「てめぇ、涼しい顔してセクハラ紛いな発言するんじゃねぇよ。」
恋人となった二人の前でも気にせず大胆な発言をするエルヴィンに、リヴァイは忌々しそうに顔をしかめた。