第21章 初体験
「エマです。」
聞こえたのは、今の今まで脳内に何度も登場させていた愛しき恋人の声。
待ち合わせ前に少しでも二人で会いたいという思いが通じたのか、エマが来てくれた。
リヴァイの鼓動は高鳴った。
「入れ。」
嬉しくてニヤけそうになるのを何とか抑え、出来るだけ落ち着いた声で返事をする。
するとゆっくりと開かれたドアの向こうから現れたエマの姿に、リヴァイは思わず息を飲んだ。
「おはようございます、兵長!」
はにかんだ笑みを浮かべながらドレスの裾をちょんとつまんで入ってくるエマ。
その姿に一瞬で釘付けになった。
くすんだ淡い水色のドレス。
ウエストよりも高めの位置でキュッと巻かれたサテンのリボンと、動く度に柔らかく揺れる裾は、ふんわりとしたチュール素材。
そしてドレス全体に施されたレースの刺繍。
色もデザインも、色白で可愛らしいエマに似合いすぎなほど似合っている。
そして髪全体を使った大胆かつ繊細なヘアアレンジはペトラがしたのだろうか、ドレスにもエマにもとてもよくマッチしていた。
まるでおとぎ話に出てくる森の妖精のようにふわふわとした可愛らしさを漂わせているが、大きく露出した鎖骨や肩からはしなやかな色香も感じさせる。
…これはまずい。
正直に言う。
可愛い。可愛すぎる……
無言でじっと見つめたままのリヴァイにエマはおずおずと口を開いた。
「……あの、兵長?」
「…なんだ。」
「そんなに見られると恥ずかしいんですけど…変ですか?」
その言葉にハッとすると、俯き気味でチラチラと様子を伺いながら不安そうにしているではないか。
変なわけがないだろ…
リヴァイは小さく息を吐くと席をたち、扉の前で立ち止まったままのエマへ近付いた。
そしておもむろに腰に手を回してエマをぐっと引き寄せると、一気に二人の距離は数センチにまで縮まった。
「よく似合ってる。お前の可愛さに見とれてぼうっとしちまっただけだ。」
口を開けば素直な思いがそのまま溢れ出てしまう。
それほどにエマのドレス姿は魅力的だったのだ。