第3章 いきなりピンチ
ドドッ!
「ひゃっ?!」
エマの座る大木の隣の木に、何かが勢いよく刺さったかと思うと、それは疾風の如く現れた。
「相変わらず色気のねぇ声だな。」
「ぁ、…あ…」
その声は…
「リヴァイへいっ………」
「なんて面してやがる。」
リヴァイの顔を見ると同時に、みるみる顔を歪ませてポロポロと涙を流しはじめるエマ。
「うぅううああああん、怖かった!!死ぬかと思っ、寒くて暗くて、本当にっ…」
エマは感情的にリヴァイの胸へ飛び込んで、声を上げて泣き始めてしまう。
一瞬驚いた顔をしたが、リヴァイは嗚咽を漏らす彼女を何も言わずに包み込んだ。
「うっうっうぅ……」
「随分と体が冷えてるな。いつからここにいやがったんだ。」
「うっ…分かりません…少し散歩に出てたら楽しくなっちゃって、歩き回ってたらこんな場所に…うぅっ」
「そうか…」
リヴァイは短く呟くと、エマの体を暖めるように自身の体で一層包み込み、彼女が落ち着きを取り戻すまでその場から動かなかった。
「…落ち着いたか?」
しばらくして嗚咽する声が止んだので問いかけると、エマはリヴァイの腕の中で顔を上げた。
「はい…あのすみません、ご迷惑を……」
「本当にとんだご迷惑だ。俺が書庫の様子を見に行ってなかったらお前は今頃凍え死んでたかもしれねぇしな。」
「ほっ!本当に、申し訳ありませんでした…」
書庫に自分の姿がないのを見つけて、探し回ってくれていたんだろうか…
エマはリヴァイに対する申し訳なさでいっぱいになりながら謝罪した。
「無事ならそれでいい。気にするな。」
リヴァイは持っていた灯りでエマの顔を照らすと、泣き腫らした顔でそれはそれはしょんぼりしている。
書庫に姿がなかったのを見て焦った。
兵舎の敷地からは出ていないだろうとは思ったが、ここは建物の他にも訓練地やら色々あってかなり広い。
どことなく危なっかしい奴だとは思っていたが、まさか1人でこんなところまで来ていたとは正直驚きだ。
念のため、とこの森も探してみたのだが、本当に来て良かったと思った。