第21章 初体験
明るく返事をするエマにリヴァイは小さく頷くと、エルヴィンもそれに続いて礼を言った。
「なに、美味い酒を飲んで一時伯爵の話し相手をしておればいいだけじゃ。エルヴィンやリヴァイもおるから安心せぇ。
初めての夜会なんじゃし楽しむくらいのつもりで行ったらよかろう。」
「出資金の話を持ちかけるのは私の役目だ、伯爵も君と会って話をしてみたいと言ってるだけだから、君はそれに集中してくれたらいい。」
「はい!ありがとうございます!」
ピクシスとエルヴィンの言葉に少し肩の力が抜ける。
ひとまず自分はあまり難しいことはしなくて良さそうだ。
知らない人と話すことはあまり苦にならないほうだし、リヴァイ達もいるからたぶん何とかなるだろう。
兵団のためにも頑張らなければ。
資金事情の命運の鍵を握るという大きな役割だが、それを任されたことが嬉しくて、早くもやる気が出た。
夜会はリヴァイは危険だと言っていたが、それでも煌びやかな世界を覗くことが出来るのは少しワクワクもする。
エマは来週が待ち遠しくなった。
一一一
「よし!できたよ、エマ!」
「……わぁ」
鏡に映る自分の姿に、思わず驚きの声が漏れてしまった。
少しくすんだ淡い水色のオフショルダーのエンパイアドレス。その至る所に繊細なレースの刺繍が散りばめられている。
ガッツリ肩が露出しているがいやらしい感じはしないし、むしろ可憐なエマにピッタリな可愛らしくも気品溢れるデザインである。
そしてサイドでまとめられた髪は薔薇の花ような形に編み上げられ、身に付けたドレスに負けないくらいの華やかさであった。
「ペトラさんすごい!こんな髪型普通の人じゃ作れないですよ!」
「フフッ、母親が理髪店をやっててよく教えて貰ってたの。でも意外と簡単なのよ!」
「そうだったんですか!こんな特技があって羨ましいなぁ。」
親が理髪店を営んでいるとはいえ、ここまで作り込んだ髪型を手際よくセット出来るペトラを素直に凄いと思った。
「エマは可愛いから、お化粧は頬紅と口紅だけでも十分だね!」
「ありがとうございます、ペトラさん!」
再び鏡の中の自分と目が合うと、見慣れない姿にエマはちょっぴり小っ恥ずかしくなる。