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【進撃の巨人】時をかける—【リヴァイ】

第21章 初体験




「今司令が仰った通りだ。」

仮面のような表情を崩さないまま答えるエルヴィンに、リヴァイの眉間の皺は益々深まる。


「あんなところにコイツを連れていくことに何の意味がある?」

「噂と言うのはすぐに広まる。“人類最強の兵士の秘書がとても見目麗しく優秀”、という魅力的な見出しは瞬く間に王都の貴族達の耳にまで届いた。
その中で、今度の夜会でその姿をひと目拝見したいとある貴族から申し出があったんだ。」


……やはりか。

そんな事だろうと思った。



「それはどこのどいつだ?」

「カール・グラーフ伯爵。」

「グラーフ伯爵?」


エルヴィンの口から出た名前に三白眼が大きく見開かれる。



都の事情にはまったく興味のないリヴァイにも、名前くらいは聞いたことがあった。

グラーフ伯爵と言えば王都の中でも有数の大貴族だ。

確か、若くして死んだ親に変わってまだ20代で伯爵の称号を背負っていると聞いている。



そういうことかよ……



ピクシスがエマを呼んだ時点からいい予感はしていなかったが、ここにきてやはり思わしくない方向へ話が進もうとしていることに苛立ちをつのらせる。



「リヴァイ、お前の言いたいことは分かる。しかしこれは調査兵団の資金事情を左右する大事な話だと言うことも分かるな?」

より一層厳しく眉根を寄せるリヴァイに、エルヴィンの抑揚のない声が響いた。



エルヴィンの考えていることは大体こういうことだろう。


エマを利用してグラーフ伯爵から調査兵団への出資金を募りたい。

あれだけの大金持ち貴族ならきっと出資してくれる額は多いはず。そうなれば厳しい財政事情の調査兵団はかなり助かる。

毎度苦しい資金繰りを強いられているエルヴィンからしたら、ピクシスが持ちかけた話に乗らない手はないと思ったはずだ。



しかし……



「…あぁ、分かってる。だが本気でそんな重荷をこいつに背負わせる気なのか?」

「彼女が首を縦に振ってくれるなら。」


相変わらず眉一つ動かさずに言うエルヴィン。
リヴァイは盛大な舌打ちをかました。



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