第20章 小さな違和感
その後、調子に乗ったハンジにまたいじられだしたエマはなんとか話題を変えようと、再びスマートフォンを見せて話をした。
だが、この行動がきっかけでエマは思わぬ疑念を抱き始めることになるのであった…
「いやーすごいね本当に!スマホ!こうして自分の顔や景色を記憶させることもできるし、地図だって見られるんだろ?」
「はい、残念ながら電波がないので地図は見れないですけど。」
「でもさ!スマホがあればウォール・マリアの奪還も巨人の正体解明も、この世界の謎そのものだって今よりかなり楽に解決出来そうだよね!あぁーー君の世界の文明が羨ましいよ!」
ハンジは早くもスマホの使い方を覚えたようで、指先で器用に操っていた。
カメラの使い方も覚えて、自撮りをしてみてはそれを眺めて不思議がるのを繰り返している。
彼女の探究心は本当に底知れなくて、そのあとスマホ以外の電子機器についても色々と聞かれた。
今夜は長くなりそうだなと思ったがエマ自身も久々にハンジと話す時間は楽しくて、今日はとことん話そうと思ったのだった。
「ねーねー!エマとよく一緒に写ってる子、この子は友達?」
ベッドに転がりながらアルバムを眺めているハンジに近寄って画面を覗き込む。
「あぁ、そうです!同じ学校に通ってて…」
………
………あれ?
「ん?どうした?」
「…あ、いえ!何でもないです!友達ですよ!」
「そっかー!この子といる時のエマ、すごく楽しそうだもんね!仲の良さが伝わってくる!」
次々写真を見ながら珍しいものを見つけては何かを言うハンジの声が遠くなっていった。
先程自分で友達だと言った顔を何度も思い浮かべてみる。
あの子はすごく仲のいい友達だ。だけど……
何故か名前が出てこない。
「…………」
あんなに仲が良かったのに忘れるはずがない…
だけど、まるでその部分の記憶だけがぽっかりと抜けてしまったかのように、いくら頭を捻っても何故かその名前を思い出すことができなかったのだ。