第20章 小さな違和感
その夜一
「エマー待ってたよぉ!いらっしゃい!」
「こんばんは、ハンジさん。」
エマは約束通りハンジの自室を訪ねた。
相変わらずどうしたらこんな風になるのかと言うほど今日も散らかっているが、変わらない光景に少し安心もしてしまう。
確か前に来た時は、兵長と団長のことを自分がどう思ってるのか分からなくて相談してたんだっけ…
そんなに月日は経ってないはずなのになんだか懐かしく思えるなぁなんて考えながら、案内された椅子へと腰掛けた。
ハンジは乗っかっていた数冊の本をバラバラと下に落として向かいの椅子に座る。
机に両肘をつき指を組んでその上に顎を乗せて、ニヤつく顔を必死に堪えようとしているようだが、さっきからまったく堪えられていなくて口角が不自然にピクピク震えている。
「コホン…それじゃあ聞かせてもらおうか。」
「え?!」
「もったいぶってないで早く聞かせてよ!リヴァイとのこと!」
「えと…な、何から話せばいいんでしょうか…?」
エマはモジモジしながらなかなか話そうとしない。
いざ自分の色恋話を話すとなると恥ずかしくてたまらなくなって、頭が真っ白になりそうだったのだ。
「そりゃあもう!どういう経緯で結ばれたのか、告白のシュチュエーションから普段のリヴァイとの様子まで全部!あ、もちろん夜の方もだからね?ンフフフ…」
「え…」
ハンジの要求を聞き凍りついてしまうエマ。
メガネが光に反射してその下の表情を伺うことは出来ないが、怪しげな笑い声を含ませながら全て話せというハンジの口端がニヤリと釣り上がっているのは分かる。嫌な予感しかしない。
「よ、夜の方の話なんて絶対無理です!それ以外ならまだ何とか話せそうですけど、そっちの話は私には……!」
「えー?!むしろ私はそれが一番楽しみなんだけどなぁ…」
大袈裟なくらいしょんぼり顔で残念がるハンジだが、それに惑わされることなく“それは無理です!”と再度強く拒んだところ、渋々了承してくれた。
「でも自分から話すのって難しいですね…」
「そうだなぁ…あ!じゃあ質疑応答形式にしよう!私の質問に答えてってくれればいいから!」
「それなら話せそうです!…じ、じゃあお願いします!」
「ンフフ、おっけー!じゃまずはね……」