第20章 小さな違和感
今までも時々、エマを可愛いと言う連中を見たり人づてにそう聞くことがあったが、実は少し前からその声が目立つようになってきているのだ。
エマは自分の色眼鏡を抜きにしてもかなり可愛いと思う。
兵士の中にも顔が良い女はいるが、エマは外見の可愛さに加えてどこか守ってやりたくなるような儚さも感じさせる。
それがまた男心をくすぐるのだろう。
だから、以前からエマをそういう目で見てくる奴にはさり気なく殺気を纏わせた視線を突き刺してやってる。
その甲斐もあってか自分の知る限りじゃ言い寄られたりはしていなさそうだが、彼女の人気が上がっているのは確実だろう。
何かと変人の集まる調査兵団だ、これからもエマを狙う奴らの動向には気をつけておかないと。
「まさかじゃねぇ、本当だ。
俺も普段からアンテナは張っているが…これからはお前ももう少し俺の女だということを自覚して行動しろ。いいな?」
「……フフッ、わかりました。」
とても真剣な顔でそう言ったリヴァイに、エマは驚いたように目を丸くしたが、直後嬉しそうに小さく笑った。
「何笑ってやがる。」
「だって…」
そんな真剣な目で“俺の女”だなんて言われたら嬉しくなっちゃいますよ。
その先の言葉までは恥ずかしくて言えず胸にそっとしまい込むエマ。
「…なんでもありません、内緒です。」
「なんだそりゃ。お前まであのメガネみたいにニヤニヤしやがって、気持ちが悪いな。」
「えー?!気持ちが悪いは酷いです!」
「…ハッ、冗談だ。そんな膨れた面するな。」
わざとらしく膨らませたエマの頬を指でつつくと、プスーと空気が抜けていく。
その姿はやはりまだ18のあどけない少女という感じで、リヴァイの恋心をまたくすぶらせるのだった。
「ん……へいちょ…」
エマ、いつからこんなにもお前のことが好きで堪らなくなっちまったんだ。
「はぁっ…また誰か入ってきたら…」
「俺は別に構わねぇ。」
考えてもよく分からない。
気が付いたらお前だけを見ていて、俺だけを見て欲しいと思うようになった。
ガキは嫌いだったはずなのに、んなもんもどうでも良くなった。
まったくお前は不思議な奴だ。