第20章 小さな違和感
突然勢いよく扉が開け放たれる。
「リィッヴァーーーーイ!!エマーーーー!!」
嘆くような叫び声と共に倒れ込みそうになりながら入場してきたのはハンジだ。
エマは慌ててリヴァイを押し退けようとしたが、彼は降りる素振りなど微塵も見せずエマを組み敷いたままビクともせずに、盛大な舌打ちとため息のコラボレーションを炸裂させている。
「リヴァイ…エマ……あれ、いないの?
……ってぇええ?!!」
ハンジはてっきり二人とも仕事中だと思い込んで真っ先に部屋の奥の机に目をやったのだが、思った場所に姿がない。
そしてあれあれと部屋を見渡すとソファに重なった二つの人影が飛び込んできて、今度は驚愕の叫び声をあげたのだった。
「さっきからクソうるせぇぞ、クソメガネ。」
ハンジに背中を向けてエマに覆いかぶさっていたリヴァイが振り返ると、今にも睨み殺しそうなほどの視線をハンジに突きつけ、それはそれはもう不愉快さ全開で言い放った。
「ごっ、ごめんごめん!二人がまさかお楽しみ中だったなんて知らなくてさ、アハハ……クソクソ酷いなぁ。」
驚いた様子のハンジだったが謝罪も軽く、すぐにいつもの調子に戻ると部屋を出ていくわけでもなく、ズカズカとこちらへ近づいてくる。
リヴァイはまたため息をつきながらエマから離れ、ソファに座り直した。
やっとのことで解放されたエマも慌てて起き上がった。
向かいのソファに座り前のめりになりながら、隣同士に座るリヴァイとエマの顔を交互に見つめるハンジ。
“フフーン”と何かに納得したようなその顔は楽しそうにニヤついている。
エマはというと、今まさにおっぱじめられようとしていたところをハンジに目撃されたのが恥ずかしすぎて、まともに顔も上げられず黙り込んでしまっていた。
「おい、気持ちの悪い顔して見るんじゃねぇよ。用がないならさっさと帰れ。」
「もう酷いなぁその言い方!邪魔して悪かったって!」
顔の前で大袈裟にごめんのポーズを作って悪びれるハンジが軽すぎて、本当にそう思ってるのかなと思ってしまいそうになったが、ハンジは元来こういう性格だから仕方がない。