第20章 小さな違和感
「よっこらしょっと……」
「おい、まだ若ぇのに年寄りみたいなこと言うなよ。」
「ッ?!兵長いたんですか?!」
夕方。
仕事のキリがついて少し体を伸ばそうと椅子から立ち上がったところに、ちょうど訓練帰りのリヴァイが現れた。
「普通扉の音で気付くだろ。」
「はっ!そうですよね…」
どうやら周りの音が聞こえないほど集中してしまっていたようだ。
不意打ちのリヴァイの登場に、伸ばそうとした背筋は勝手に伸びていた。
「体はまだ痛むか?」
「あ、はい少し…」
「まぁ無理もねぇか。あんな夜を過ごしたのは初めてだったんだもんな。」
「…ほ、ほんとですよ!兵長の……せいです…」
少し意地悪く言うリヴァイにムキになりそうになったが、昨夜のことを思い出すと途端に恥ずかしくなり尻すぼみになってしまった。
すると近づいてきたリヴァイにクイと顎を持ち上げられる。
「でもよかったんだろ?」
「兵長…ストレートに聞きすぎです…」
「回りくどいのは好かねぇ。で?どうだったんだ?」
顎を掴む手の親指が、ゆっくりと下唇をなぞる。
「よ…よかったです…」
リヴァイの官能的な仕草に昨日のことを思い出してしまい、身体の奥がきゅんとした。
観念して答えるとリヴァイは満足そうな顔をした。
「それで、体はどこが痛むんだ?」
「腰と太腿、ですかね…」
質問に素直に答えるといきなり腰に手が回され、スリスリと撫でられる。
どことなく艶かしい動きに、エマの体は無意識に跳ねてしまった。
「ど、どうしたんですか…」
「あ?体が痛いというから労わってやろうかと思ってな。」
「え?!そんな、そこまでしてもらわなくても大丈夫ですよ!それに兵長こそお疲れなのにそんなことさせる訳にいかないです!」
「うるせぇな…こういう厚意は素直に受け取るもんだぞ。」
「で、でも……」
「ここか?」
エマの話を無視して腰に当てた親指に力を入れながら少しずつズラして位置を確かめるリヴァイ。
突然始まった兵士長によるマッサージタイムにエマはどうしたらいいのか分からず慌てたが、絶妙な力加減でいい所を指圧されると自然と体の緊張は解けていってしまうのだった。