第20章 小さな違和感
「だ…いじょうぶです……」
団長、なんで知ってるの?!
兵長が言ったの…?
でも自分からそんなこと言うような感じには見えないし…
驚きすぎて激しく動揺するのを見て、ついにエルヴィンはフフッと笑みを零した。
「すまない、エマの反応が面白くてつい。何故それを知ってるのかという顔だな。」
「あの、え、えと…もしかして兵長から……?」
「まぁある意味それも近いかな。」
ん?どういうこと?
楽しそうにそう答えるエルヴィンに疑問符がたくさん浮かんだ。
「壁外調査の日、リヴァイの尻を叩いたのは私だ。」
「……え?」
「前日の君の様子から嫌な胸騒ぎがしていて、どうにも気になったからリヴァイに頼んだんだ。帰還したら様子を見に行ってくれないかと。」
“まさか一人でシーナまで行くとまでは思わなかったんだがな。”と付け加え、再び微笑む。
一方のエマは、エルヴィンの言葉に目を見開き黙り込んでしまっていた。
「それに、想いが通い合う瞬間はよりドラマティックな方が良かっただろう?」
「……だんちょう…」
もしかして…団長は全て分かってた上でそう行動していたってこと…?
そんな……
エルヴィンのはからいを知り、胸の奥底から急激に熱いものが込み上げてくる。
「エマ…?」
エルヴィン団長は、一体どこまで…
このことだけじゃない、壁外調査前の夜だって、ここでやっていく自信をなくしかけた時だって、花畑に連れてってくれた時だって。
「……ッ」
いつもいつも、“君のためなら”と言って優しくしてくれる。
それなのに私は、私は…
「なぜ泣いているんだ…?」
私は…
「どこまでも団長の優しさに甘えてばかりで…私は何一つ……」
応えられない。
泣いていい立場なんかじゃないと歯を食いしばっても、ポロポロと涙が零れてしまう。
「そんなことはない。何度も言っているが君には幸せになって欲しいんだ。
こんな残酷な世界だが、それでもここに幸せがあるのなら掴んで欲しい。君の笑顔のためなら出来ることは何だってしてやりたい、ただそれだけなんだよ。」
迷いのないまっすぐな優しさが心に痛いほど染みた。