第3章 いきなりピンチ
「素敵な建物だなぁ」
石造りの建物も、この石畳も、まるで中世のヨーロッパ辺りを舞台にした映画の撮影セットのようだ。
目的もなくただ歩いているだけだが、目に映る景色は全て新鮮で、エマにとっては楽しい時間だった。
「それにしても広いなー。」
そりゃ何百人も兵士が暮らしてるんだから、当然か。
「うっ、寒い…」
ここにもどうやら四季があるようで、1月の夕方ともなれば空気が一層冷えてくる。
ヒュッと北風が頬を掠めると、エマはブルっと体を小さく震わせた。
「そろそろ戻ろうかな………って、あれ?」
あれ…ここ、どこだ…?
気がつくと、来たことない場所だった。
こんな所は昨日ハンジに案内されてない。
辺りを見回すと、高い木々が自分の周りを囲い、視界を塞いでしまっていた。
石造りの建物がどこにあるのか分からない。
どれだけぼーっとしてたんだ、私…
とりあえず来た道を戻ろうと踵を返すが、目の前にはけもの道が何本も伸びていて、自分がどの道を通ってきたのかまったく分からなかった。
「えと…と、とりあえず右かな?!」
エマは嫌な予感を感じたが、首を振ってブンブンとそれを追い払うと、力強く足を踏み出した。
一一一一一一一一一一一一一一一一一一一
「ど、どうしよう…」
まずい、完全に迷った。
あれからどのくらい歩いただろうか、陽は半分山に隠れ、辺りは薄暗く寒さもぐんと強くなった。
冷たくなった手を擦りながら、森の中にある1本の大木の下に座り込む。
さっきから同じような道ばっかりで、兵舎に近付いてるのかもわかんない。
寒い、お腹空いた…
こんなことになるなら、お昼ご飯食べとくんだった。
「ハンジさん、エルヴィン団長、リヴァイさん…」
ダメだ、涙が出てきそう。
心が折れちゃダメだ、早く皆のところへ帰らないと…