第19章 休息 ※
「あぁ、風呂上がりだからな。」
「た、タイミング悪くてすみませんでした!」
「特に問題はねぇ。それよりまたそんな所に突っ立ってないでさっさと入れ。」
「はい…」
軽く取り乱すエマに対し平然としているリヴァイに、一人で慌てているのがさらに恥ずかしくなってしまうが、とりあえずあまりその姿を直視しないようにしてどうにか自身を落ち着かせた。
久しぶりに足を踏み入れた部屋。
前回ここに来たのは、確かずいぶん前の歓迎会で泥酔してしまった時だったっけ…と思いながらぐるりと部屋を見渡した。
必要最低限の家具と小物。
余計なものは一切無く見るからに清潔さが漂う部屋からは、微かに良い香りがする。
そして部屋の奥に鎮座するベッドには、真っ白なシーツが皺なくピンと張られていた。
「適当に掛けてろ。」
「あ、はい。」
促され二人がけのソファの端にちょこんと座った。
脱衣場に入っていく後ろ姿を目で追う。
色気まで感じてしまうその美しい佇まいに、エマはすっかり目を奪われてしまっていた。
少しして戻って来たリヴァイはちゃんと服を着ていて安堵するが、それでもなかなか緊張は解けなかった。
「なんだ、また緊張してるのか?」
「ちょっとだけ…こうして兵長のプライベートにお邪魔するのも初めてですし……」
「まぁそれはそれでこっちとしては新鮮で楽しいがな。」
「たったの……!」
「あぁ、楽しいぞ。お前は楽しくないのか、エマ。」
「いえ…楽しいか楽しくないかと言われればもちろん楽しいですけど、それよりもその、色々あってこの先心臓が持つかどうか…」
エマは尻すぼみになりながらチラチラと隣に座るリヴァイを見る。
すると背もたれにだらりと預けていたリヴァイの腕が突然華奢な肩を抱き寄せた。
必然的にリヴァイの肩に頭が寄りかかる形となり、二人の間の小さな隙間も自然と埋まる。
「お前はもう一丁前に俺を誘うようになったのか?」
「え?!そんなこと…!」
「おいおい無自覚か。期待するような目で心臓が持たないかもしれないなんて立派な誘い文句だろうが。」
リヴァイはそう言いながら背もたれから体を起こすと、妖艶な笑みを浮かべてエマの顔を覗き込んだ。