第19章 休息 ※
「エマ、俺は別に怒ってなどいないしお前の誠意は十分に伝わってる。そうしょげるな。」
「うぅ…すみませ……」
暗い顔をしていたエマの頭をポンポンと撫でてやると、目を見開き今度は泣きそうな顔をし出した。
まったく、忙しいやつだな。
本音を言えばやはり巨人なんて見て欲しくなかったが、まぁそれはもう過ぎたことだし仕方がないとして。
リヴァイはそれよりもどうにもモヤモヤしてしまう点がひとつだけあった。
「!?……あ、あのっ」
リヴァイはエマを抱き寄せ、その逞しい腕で小さな身体を包み込んだ。
なんの脈絡もない行動にエマは慌てふためいているが、構わず抱きしめる腕に力を込める。
「あの、兵長……?どうしたんですかいきなり…」
「あぁ、どうしちまったんだろうな。」
「…………」
そう。エマが巨人を目にしてショックを受けている時傍にいたのがモブリットだった、という話。
たったそれだけのことなのに、リヴァイの気持ちをざわつかせている。
モブリットに下心があるとは思わないし(そもそも彼はハンジを思慕しているはずだ)、そんなことは心配ないと頭では分かっている。のだが…
エマの恐怖をぬぐい去ってやる役目が自分ではなくモブリットだったと考えただけで、心の奥からズクズクと嫉妬心が湧き上がってしまったのだ。
たったこれだけのことで嫉妬してしまうなんてまったく馬鹿げていると思うが、困ったことにどうにも抑えることができない。
そしてあまり抱いたことのないその感情に気持ちのやり場も分からず、ついその思いをエマにぶつけたのだ。
「兵長……なぜ私は抱きしめられてるんでしょうか…」
「そうしたいと思ったからしてるだけだ。」
「は、はぁ……」
エマからしたら全く訳が分からないだろう。
だけど正直に、モブリットとのことに嫉妬したから、なんて言えるはずがない。
こんなことで嫉妬して小さな男だとでも思われたらたまったもんじゃない。
そう考える自分を、どこか冷静に見つめるもう一人の自分が滑稽だなと笑っているような気がした。