第18章 少女が見たもの
「それじゃあ先にエルド達が馬を外へ出してくれたから、エマはこっちの馬房から古いおがくずをこの一輪車に積んでくれる?私は向かいの馬房をやるから!」
「了解です!」
「ちょっと体力仕事になるけど頑張ろうね!」
「はいっ!」
人懐っこい笑顔でペトラにそう言われれば自然とやる気も上がる。
言われた馬房に入り、さっそく地面に敷き詰められたおがくずをスコップで掬ってひたすら一輪車に乗せるという作業に取り掛かった。
「お、終わったぁ…」
それから4時間程経った頃、厩舎の掃除は一通り完了した。
正直、思った以上に疲れた…
久しぶりにガッツリ体を動かしたせいもあるのか、疲労感が凄い。身体中の至る所が既に筋肉痛を起こし始めていた。
「皆ご苦労だった。エマも初めてなのによく動いてくれて助かった。ありがとう。」
「いえ!あいたたたっ」
エルドが微笑んで差し伸べてくれた手を握ろうと近づこうとしたが、体を動かした瞬間腰がギシギシと痛んで思わず声を上げてしまった。
エルドが咄嗟に声を掛ける。
「おい大丈夫か?」
「だ、大丈夫です…」
「ちょっと無理させすぎちゃったかなぁ。エマ、大丈夫?」
「いえいえ、このくらいどうって事ないです!それに普段運動しなさすぎな自分のせいですし、はははっ。」
本当に運動不足すぎだ。
ここへ来てからほぼ毎日デスクワークだったにしろ、体力も筋力も無さすぎる自分が情けない。
軽く腰を抑え、そんなことを考えながらエマが自嘲すると、グンタがニカッと歯を見せいたずらに笑ってみせる。
「確かに、いつもは兵長のもとで執務の手伝いだもんな。
まぁでもたまにはいいだろ?こうして外で体を動かすのも。」
「そうですね。体は痛いですけど気持ちはなんだか晴れやかです!」
汚れていた場所を綺麗にするとやはり心もスッキリする。
馬房に戻された馬達も喜んでいるように見えるし、エマはとても気分が良かった。
「エマと初めて一緒に長い時間行動したが、兵長がお前を気に入ってる理由が何となく分かった気がするな。」
「え?」
スッキリした気分で談笑していた中、エルドが唐突に言い出したことにエマは思わず目を丸くした。