第18章 少女が見たもの
いつもいがみ合ってるけど、何だかんだ気が合うんだろうなぁこの二人。
二人を見てそんなことを思いながら、オルオへハンカチを差し出した。
「すまねぇな…エマ。」
「気にしないでください。」
「ほんとオルオはドジなんだから!…ところでエマはこんなところで何してたの?」
「午前中で頼まれていた仕事が片付いたので、花壇の手入れでもしようと思って。」
「そうだったの!ここの花壇、長年放置されてたから酷い有様でしょ?!…ありがとう、何か手伝えることがあったら言って?私も協力する!」
ペトラはエマに向かって首をかしげながらニッコリ微笑んだ。顎のラインで切り揃えられたオレンジの髪がふわりと揺れる。
初めて会った時も思ったが、やっぱり人懐っこくて可愛い人だなとエマは思った。
「ありがとうございますペトラさん。でも今から作業か何かされるんですよね?」
ペトラの手に柄の長いフォークのような物が握られているのを見て、エマは尋ねた。
「あっそうだった!これから厩舎の掃除なのよ!エルドとグンタ、もう先に取りかかってるわきっと…オルオ行くわよ!」
持っていた掃除道具をペトラに押しつけられると、それを渋々手に取りながらオルオは間延びした返事をしていた。
「そうなのですね!でもオルオさん、手首はもういいんですか?」
右手首を見ると、もう簡単に包帯が巻かれているだけだった。
「片腕でもできる仕事をやるから心配ねぇよ。それよりおめぇも暇ならちょっと手伝え。」
「ちょっとオルオ!エマだって忙しいんだからこんなこといきなり頼むのはよくないでしょ!」
「いいんですペトラさん!私もどのみち手持ち無沙汰には変わりないので、できることがあるならやらせてください!」
確かに今から花壇の手入れをしようとはしていたが、それは厩舎の掃除の手伝いの後でもまったくもって問題ない。
「じゃあお言葉に甘えてもいい?オルオも大して使えなさそうだし、厩舎の掃除って結構大変でさ。正直エマにも来てもらえるとだいぶ助かる。」
ペトラは眉を下げて舌をペロっと出す。
「はい!ぜひお手伝いさせてください。」
ペトラの可愛らしい仕草に自然と頬が緩むのを感じながら、エマも歩き出した二人のあとをついて行った。