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【進撃の巨人】時をかける—【リヴァイ】

第18章 少女が見たもの



エマは様子を伺うようにチラチラとリヴァイに目線をやりながら口を開いた。


「べ、勉強のために、一度実物を見るのもいいのではないかと…」

「…やめておけ。」


リヴァイは恐る恐る話すエマの目をじっと見つめ、一言そう言った。

柔らかな語調だったがその瞳は真剣そのもので、エマは反論することができなくなり口を噤んでしまった。



「あんなもの見たって何も愉快なことはねぇよ。
兵士でも初めて見た時その衝撃に失禁する奴がいるくらいだ。お前にはわざわざそんな思いはして欲しくない。」

「……そ、そうですよね…」



兵長は、実際に巨人と対峙してその恐怖を思い知っているからこそ、こうして止めてくれるんだろう。


頭ではそう納得出来たのだが、やはり少しだけしゅんとしてしまったエマにリヴァイは続ける。


「お前のことだから、兵士の気持ちを少しでも理解したいとか思っての発言なんだろ?
その努力の姿勢は褒めてやるが、そんな事しなくたってお前は既に十分やれてる。だから今みたいに変な考えだけは起こすんじゃねぇ。いいな?」

「…は、はい。」



何と鋭い人なのだろうか。

自分の思惑をまんまと当てられここまで言われてしまえば、さすがにエマも頷くことしかできなかった。


リヴァイに言われた通り、巨人を見に行くなんて考えはよそう。

別に巨人を見なくたって自分に出来ることは色々あるはずだ。





「なんかすみません……すごく浅はかでした。」

「謝ることはねぇだろ。お前が必死に俺達の気持ちを理解しようとしてくれたってことだ。」

「いえ、でも私は結局よく分かってなかったんだなって。」

「別に全てを理解しようとしなくていい。お前にはお前にしかできないことがあって、それで助かってる奴もいるんだ。俺みたいにな。だから今のままでいい。」

「はい…ありがとうございます。」



リヴァイは優しく宥めるように言うと、カップに残された最後の一口を飲み干し立ち上がった。



「今日は早めに上がれ。明日からも忙しいからあまり根を詰めると後が辛い。」

「分かりました。」


エマはリヴァイに言われた言葉を噛み締めながら、机へと向かった。



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