第18章 少女が見たもの
中にはハンジの姿もあったが、先程巨人の名前に悩んで騒いでいた時のおちゃらけた様子は何処にもなく、真剣な表情で資料に目を通している。
その様子に、やはりハンジも確かな実力を伴う優秀な兵士であることを再認識させられ、そんなこともエマの緊張感を煽る一因となっていた。
皆、今日まで厳しい壁外調査を生きながらえてきた兵士なんだ…
エマはその存在感と迫力に圧倒されてしまいそうだった。
この異様な雰囲気に、幹部でもなければましてや末端の兵士でもない自分がここに座ること自体おこがましいような気がしてならなかったが、エマは与えられた役目を全うしようと大きく息を吸い込み自分を奮い立たせた。
「これより、第45回壁外調査に関する幹部会議を始める。」
リヴァイの隣に座っているエルヴィンが号令を出すと、ザワザワとしていた室内が一気に静まり返る。
エマはペンを握り聴覚を研ぎ澄ませ、話に真剣に耳を傾けながら手を動かし始めた。
話の内容は、今回の調査を経てのウォール・マリア奪還ルートの進捗具合の確認と、次の壁外調査で目標とする補給地点までのルートの意見交換。
それに捕獲した巨人についての詳細報告と今後の研究方針についての説明がハンジからと、今回の調査で負傷、死亡した兵士の報告がそれぞれの班長からなされた。
この会議でのエマの役割は議事録を作成すること。
内容を正確に聞き取り、それを誰にでも分かりやすくまとめ上げることが重要な仕事だ。
議事録を書くこと自体ほぼ初めてのエマだったが、耳と手をフル回転させて、会議の内容をできる限り脳内と紙面に叩き込んでいった。
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その日の昼下がり一
「奪還ルートの進捗状況はやっぱり図で描き起こした方が見やすいかな…あとは項目ごとに見やすく段落分けして……巨人研究方針と戦死者情報は表にまとめて………」
さっそく先の会議のまとめに入ろうとしたエマは昼食もそこそこに、執務室へと一目散に戻っていた。
会議中にまとめたメモを見ながら、どうまとめれば伝わりやすいかを真剣に考えていると、部屋のドアが開く音がする。