第18章 少女が見たもの
「できればこのままお前を押し倒したいぐらいだが、生憎そうもいかねぇからな。少しの辛抱だ。」
そう言いながらエマの髪を撫で優しくキスをした。
リヴァイはかなりストレートだ。
いつもこういう気持ちを恥ずかしげもなく包み隠さずにぶつけてくる。
恋人になる前はどちらかというと何を考えているか分からないような感じだった。
だから意外な一面だと思ったが、こういう素直な部分を自分だけに見せてくれているのか思うとエマは嬉しくてたまらなかった。
その証拠に心臓はさっきからドキンドキンと弾みっぱなしである。
「私も…その、リヴァイさんとの時間を励みに頑張ります。」
自分からもちゃんと伝えたくて、恥じらいながらも思いを口にすると、すぐに逞しい腕に抱きしめられた。
「そんなこと言われると離したくなくなっちまうだろうが…」
「す、すみません…」
「ほんとにお前は馬鹿な奴だ…」
逞しい腕に力が入り力強い抱擁をされた後、その腕は名残惜しそうに離された。
「…いい加減準備しねぇとだな。」
「そ、そうですね。」
そろそろ本気で頭を切り替えなければいけない。
二人は私的な感情をぐっと抑え込んで密着していた身体を離すと、会議に向けての準備を始めた。
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長机を四角く囲った会議テーブルの最前列の隅に座るエマ。
隣にはリヴァイが座り、配られた資料に黙って目を向けている。
さっきまでの甘いものとは打って変わってピリッと引き締まった空気に、エマの背筋は自然と伸びた。
「そんなに気負う必要はねぇぞ。」
「は、はいっ。」
リヴァイが気遣う言葉をかけてくれるが、続々と集まる兵団の幹部達を前に、肩の力はそう簡単には抜けなかった。
「……………」
なんだか皆大物なオーラを放ってて緊張するな…
エマが幹部会議に出席するのは初めてのことだ。
リヴァイやハンジから教えてもらって幹部の顔と名前は全員記憶していたが、一堂に会すのを見るのはこれが初めてであった。