第3章 いきなりピンチ
「おはよーエマ!ここいい?」
「おはようございます、ハンジさん!もちろんです!」
まだ人がほとんどいない食堂の隅で朝食をとっていると、向かいにハンジが腰を掛けた。
「随分と早いんだね。」
「エルヴィン団長に早めに行った方がいいって言われたので。」
「それもそうだね。エルヴィンのところに行っていたの?」
「はい、少しだけ。書庫の鍵を借りてきました。」
「おっ、巨人の勉強?いいねいいねぇ〜!あそこにはいろんな資料があるから、好きなだけ見てくるといいよ!それでさ!また今夜にでも私がその補足説明をしてあげるよ!」
エマの熱心な姿勢が嬉しいようで、ハンジは朝からテンションを上げている。
「フフフ、そうなんですね、楽しみです。あ!そうだハンジさん!」
エマはハンジに言うべきことを思い出すと、顔を近づけて小声で話し出した。
ハンジもなになに?と興味ありげに耳を寄せる。
「私、とりあえず皆さんには、リヴァイ兵長の秘書、ってことで行こうと思うんですけど…」
「リヴァイの秘書?!そりゃまた思い切ったこと言うね!リヴァイがそう言えって?」
ハンジも周りに気を使って小声で話してくれている。
「エルヴィン団長にも秘書がいたことがあったし、大丈夫だろうって。」
「へぇ、なるほどね~。」
リヴァイにしてはちょっと強引な理由付けだな、とハンジは思ったが、たぶんエマを自分の管理下にしておいた方が、彼女の立場を守るためにはいいのかもしれないと考えたのだろう、と思っていた。
「じゃあこれから色々と仕事も任されるわけかー。かわいいエマをあんまりいじめないように言っとかないとね。」
「あ、仕事はおいおい任せると言われました。とりあえず今は私のやるべき事をやれ、って………!! 」
エマは自分で言いながらハッとする。
一そうだった。
私、元の世界に帰らなきゃだ。
忘れていたわけじゃないが、帰る方法を探すことはいつの間にか頭の隅に追いやられていた。