第18章 少女が見たもの
「時間がねぇ、早くしろ。」
「は、はいっ」
もう待ちきれなくて急かすように言うと、すっかり頬を紅潮させたエマは躊躇いながらもゆっくりと膝に腰を下ろした。
リヴァイと向かい合うような形で座ったエマの腰に腕を回し、髪を優しく撫でてやる。
「へ、兵長……恥ずかしいです…」
この体勢もそうだが、何せ顔が近すぎだ。
自分の少し下にある、リヴァイの顔。
エマは恥ずかしくて目を合わせることができず、ついつい目線を上の方に泳がせてしまう。
リヴァイは髪を撫でていた手をするりと頬へ到達させると、無理やり視線を合わせるように下を向かせた。
「ちゃんとこっちを見ろ。」
「う……」
羞恥心で潤んだ目を向けると、憂いを帯びた三白眼が見上げていて瞬く間に目を逸らせなくなった。
リヴァイを見下ろしている…
いつも大抵自分が見上げるばかりだったから、新鮮な景色にドキドキしてしまう。
「………」
「へいちょっ…!」
無言でじっと見つめられ、耐えられなくなって思わず名前を呼んだ瞬間にその口は塞がれてしまった。
すぐに舌が入り込んでくる。
「……ん、へいちょ………」
後頭部に手が回されて逃げられなくなる。
いきなりの激しいキスに、エマの思考はすぐにぼやけてしまい、呼吸の合間で無意識にリヴァイを呼んでいた。
「なぁ、名前を呼んでくれねぇか。」
限られた時間で少しでも現実逃避したかったのかもしれない。
一度唇を離したリヴァイは肩書きで呼ぶことを止めさせると、エマは素直に従った。
「リ…リヴァイさん……」
照れくさそうに呼ぶ声。
愛しい人に名前を呼ばれることがこんなにも嬉しくて、心が満たされるということを、エマを通して初めて知る。
「んっ…リヴァイさんっ…」
「エマ……」
衝動的にまた唇を奪い、キスの合間に名前を呼びあった。
細い腕が遠慮がちにリヴァイの首へと回される。
エマからもぎこちなくだが、昨日より積極的に舌を絡めようと動かしている。
そんな健気な姿勢もまたリヴァイの身体の奥を熱くさせ、二人はしばしの間夢中で舌を絡め合った。