第18章 少女が見たもの
自分の執務室へたどり着くと、小さく息を吐きながらソファに座り込んだ。
執務机を見れば、壁外調査の後処理に関する紙の束がドサリと置かれている。
帰還して翌日の朝だから今のところまだ量は少ないが、これから数日間は湧き出てくるように次々と積み重なる書類と格闘しなければならない。
それに、今回の調査で犠牲になった兵士の遺品整理が終われば、弔問も待っている。
書類仕事は元々好きじゃないし、弔問は兵士長の肩書きがついてから毎回行なっているのだが、これに関しては何度経験しても慣れないし辛い。
執務室に戻ったら、なんだか昨夜のことから一気に現実に引き戻されてしまった気分になった。
叶うことなら昨日恋人になったばかりのエマとこのままいちゃいちゃしていたかったが、もちろんそんなわけにはいかない。
「兵長?大丈夫ですか?」
現実から目をそらすように無意識に目を瞑っていたようで、声のする方向へ目を向けるとそこには心配そうな表情で自分を見下ろすエマの顔があった。
「…やっぱりお疲れですよね、すみません。」
申し訳なさそうに眉下げるエマ。
自分のせいで余計に疲れさせてしまったのではないかと、昨日のことをまだ気にしているんだろう。
そんなことはもういいのだ、まったく気にしてない。
そんなことより、そんなことより……
「いや、大丈夫だ…それよりここに座れ。」
「えっ?……ここ、ですか?」
リヴァイが座れと言った場所を見て、思わず聞き返してしまったエマ。
「そうだ。」
リヴァイが指差すそこは、膝の上だったのだ。
「え、え、でも…隣に座れるスペースありますよ?」
「分かり切ったことをいちいち言うな。いいからここに座れ。」
「え…と……」
溜まった仕事もある中エマとゆっくりできる時間は限られているのだ。
それにこの後じきに幹部会議が始まるし、その前に少しの間だけでもエマに触れていたい。
そんな思いからとった行動だった。
一方のエマはそんなリヴァイの大胆な要求に急速に頬を赤らめた。
突然こんなことを言われてどうしたらいいのか分からないのか、もじもじしてなかなか動こうとしない。