第18章 少女が見たもの
「リヴァイ。エマの笑顔を守ってやれるのはお前だ。だから、これからは彼女を悲しませることがないようお前の手で守ってやってくれ。」
碧い瞳を細めて微笑んだエルヴィンはリヴァイの目にはどこか物悲しげに映り、その表情に心臓が小さな針でチクリと刺されたような痛みを感じる。
彼の言葉と表情が彼の気持ちを全て物語っているかのようだった。
そしてリヴァイにはその気持ちが何となく分かってしまった。
きっとこれ以上感謝の言葉を口にすれば、彼のプライドを傷つけてしまう。
喉元まで出かかっていた言葉を飲み、代わりにこう答えた。
「あぁ、言われなくてもそうするつもりだから安心しろ。」
その言葉にエルヴィンは一瞬だけほっとしたような表情を浮かべ、
「それは余計なお世話だったな。」
と笑いながら冗談めかした口調で返すのであった。
エルヴィンとリヴァイは無意識に同じタイミングで、少し離れたところにいるエマへと目を向ける。
ハンジとわーきゃー騒いでいた最中ふとこちらに気が付くと、エマは二人に向かって無邪気に顔を綻ばせた。
「兵長、団長!ここまで名前絞れたんですけど、どれがいいですかね?!」
ハンジの書いた名付け用紙を手に持ちペラペラとなびかせている、純粋無垢なエマ。
「おい、全然絞れてねぇじゃねぇか。」
「いやこれでも最初の4分の1ぐらいまでは減ったんだよー!ねぇ?エマ!」
「はいっ!結構悩みました!」
「私はこれがいいと思う。」
「あ!私もそれいいと思ってたんだよ!エルヴィン、私とセンスが似てるんだね!」
「……はぁ」
仕方なく盛り上がっている巨人狂とその子分の所へ行ってやれば、びっしり書かれた名前の中からペンで数個の名前に丸が付けられている。
正直どれでもいいからエマには早くこんな会話止めて欲しいと思っていたリヴァイだったが、弾んだ声で名前を呼ばれたので顔を上げると、キラキラと眩しい笑顔を向けるエマがいた。
「兵長はどれがいいと思いますか?!」
はりきった口調でどうでもいいことを聞いてくるエマ。
本当にどうでもいい…
どうでもいいんだが………